札幌地裁平成30年12月25日判決(労働判例1197号25頁)

ベルコ(代理店代表社員)事件 (控訴中)

【事案の概要】

(1)原告は、合同会社A代理店(以下「原告会社」という。)の代表社員である。
   被告は、冠婚葬祭互助会員(以下「会員」という。)の募集及び冠婚葬祭の請負等(以下、併せて「被告事業」という。)を目的とする株式会社である。

(2)被告の営業本部は、地方ごとのブロックに分けられ、それぞれの下に支社が設置されている。そして、支社の下に、被告と代理店契約及び業務執行委託契約を締結した個人事業主や法人である代理店が位置付けられている。
   平成23年6月には支部制が導入され、代理店を支部と称して、代理店の営業地域を原則として行政区画単位で割り振り、代理店はその範囲で営業を行うようになった。
   代理店に所属する従業員には、葬儀執行を担当し互助会入会契約を獲得するFA,各家庭を訪問して互助会入会契約を獲得するPR等の職種がある。

(3)原告は、平成14年10月28日、被告との間で、被告の会員募集業務や互助会入会契約の契約代理業務(以下「本件業務」という。)を受託する旨の代理店契約及び被告の運営する葬儀の役務提供に関する業務執行委託契約を締結し、以後、1年ごとに上記各契約を更新しながら、被告の代理店として札幌市B区で本件業務を行ってきた。
   原告は、平成20年4月、Oとの間で、1年間の期間の定めがある雇用契約を締結し、同契約は1年ごとに更新された。また、原告は、平成21年4月、Nとの間で、1年間の期間の定めがある雇用契約を締結し、同契約は1年ごとに更新された(以下、OとNを併せて「Nら」という。)。

(4)原告は、平成22年12月6日、合同会社A代理店(原告会社)を設立した。
   そして、原告は、被告に対し、代理店契約に基づき保証金(業務委託契約による原告の被告に対する一切の債務を担保する金員)を支払った。
   また、原告は、源泉税、消費税その他の税金及び労働保険料その他の社会保険料を、原告又は原告会社名義で納付した。

(5)原告と被告の間の代理店契約及び業務執行委託契約は、平成27年1月31日に終了した。そして、原告が担当していた札幌市B地区の代理店の経営は、被告の別の代理店を経営していたCが承継して、行うようになった。しかし、Cは、Nらを雇用しなかった。

(6)原告は、Nらが実質的に被告の従業員であることを前提として、Nらが原告の従業員であることを前提として原告が被告に支払ってきた保証金並びに本来被告が負担すべきであるにもかかわらず原告が負担していた税金及び社会保険料相当額が、被告の不当利得に当たるとして、本訴を提起した。

【争点】

(1)主位的主張
 ア 原告が被告の商業使用人であるか(争点①)
 イ 原告が被告の商業使用人である場合、原告とNらの間の雇用契約の効力が被告に帰属するか(争点②)
(2)予備的主張①
   原告が被告の代理商である場合、被告が代理商を主張することが信義則に反するなどして許されないか(争点③)
(3)予備的主張②
   原告が被告の代理商である場合、被告とNらとの間に黙示の雇用契約が成立しているか(争点④)
(4)その他
   原告が原告会社の設立後の利得の返還を請求できるか(争点⑤)
であるが、以下、(1)主位的主張(争点①、②)及び(3)予備的主張②(争点④)についての裁判所の判断の概要を示す。

【原告の主張】

(1)主位的主張
 ア 争点①について
   会社法14条1項の商業使用人は、必ずしも営業主と雇用関係にある者だけに限られず、これと委任関係にある者も含まれると解される。ただし、その場合においても、当該営業主の行う営業活動が、営業主の行う本店又は支店の営業活動の一部を成しているといえる必要がある。
   そのため、原告が被告の商業使用人に当たるか否かの検討に当たっては、①被告からの指揮命令の有無が中心的要素となり、この点については、a.仕事の依頼、業務従事の指示に対する諾否の事由、b.業務遂行上の指揮監督、c.場所的・時間的拘束性の観点から、労働力利用の自由を失わせるような拘束性が認められるか(人的従属性)という観点から検討することとなる。
   さらに、②原告が自己の計算と危険負担によって仕事を遂行していたのか、それとも被告の営業補助者にすぎないのかという点を、a.報酬の労務対償性(労務の対価として報酬が支払われているのか)や、b.原告の事業者性の有無ないし専属性の程度(被告の企業組織に組み込まれて労働するという組織的従属性)という観点から検討し、指揮命令関係を補完する要素として考慮すべきである。
   これを本件についてみると、別紙13(略)の「原告の主張」欄の各事実によるならば、原告は、被告の商業使用人であることは明らかである。
 イ 争点②について
   各代理店で採用されたFAら従業員は、被告から被告の従業員として扱われ、FAらが活動して生じた売上げ等は、全て直接被告に帰属している。このような被告の全体像からすると、FAらは被告の従業員という外観を有している。
   Nらは、原告と形式的に労働契約書を取り交わすことにより、以上のような被告の従業員という外観の中に取り込まれるのである。そのため、上記労働契約書の「事業所名 札幌B支部」との標記が被告を意味するものではないとはいえない。
   そうすると、原告が被告の商業使用人として締結したNらとの雇用契約の効力は、会社法14条1項の適用により、被告に帰属する。

(2)予備的主張②(争点④)
   原告が被告の商業使用人ではなく代理商であったとしても、①代理店におけるFAやパート従業員の採用実態、②指揮命令及び労務提供の態様(直接業務指示・指導を行う主体、労務提供の相手方等)、③人事労務管理の態様(勤怠管理、配置、懲戒、解雇等の決定主体等)、④従業員に対する給与の支払の態様を踏まえると、原告が形式上雇用した扱いとされたNらと被告の間には、黙示の雇用契約が成立していたといえる。
   以上のようにいえる具体的な根拠は、別紙14(略)の「原告の主張」欄記載のとおりである。

【裁判所の判断】

(1)主位的主張(争点①、②)
 ア 原告は、原告が被告の商業使用人であったと主張するので、以下検討する。
 イ 確かに、被告は、被告事業の推進のため、代理店を被告の支社の下に位置付けて、これらが被告と一体的な組織であるかのように運用しようとし、代理店となる者に対し被告所定の条件で代理店契約を締結させた上で、代理店の営業目標や代理店と従業員との雇用条件等についても方針を定め、それを支部長会議棟の場を通じて相当程度強く代理店に指示するなどしていたことは否定し難い。
 ウ しかしながら、その指示を受けていた原告は被告と代理店契約を締結した上で本件業務を行い、被告の意向を踏まえつつも、原告自身の判断において従業員の採否や雇用条件の決定を行っていたものである。また、原告は、相当数の従業員を雇用した上で、従業員に対し各種指示を行って本件業務を行い、しかも、平成22年12月からは、本件業務を行うために原告会社を設立し、同社において確定申告を行って公租公課を負担していたのである。そうすると、原告が被告の指揮監督に従って本件業務を行っていたとみることは困難である。
   そして、原告は、代理店契約上、本件業務を再委託することこそ禁止されていたものの、原告のみにより本件業務を遂行することは何ら予定されておらず、むしろ、基本的には原告が従業員を雇用して本件業務を行うことが予定されており、現に、原告らはNらを含む相当数の従業員を雇用して本件業務を遂行していたのであるから、業務の代替性があったといえる。
   さらに、原告が被告から支払を受ける本件業務の遂行の対価は、原告が互助会入会契約を獲得した数に応じて定める募集手数料にその他の所定の手数料を加えた手数料であり、基本的には原告が獲得した互助会入会契約の数に応じて定まるものといえ、それ自体原告が提供する労務の時間や量と相関関係があるものではない。しかも、互助会入会契約の獲得は、原告だけが行うものではなく、原告の従業員も行うものであるから、手数料には、原告の従業員が提供する労務により得られる部分が含まれている。そうすると、被告から支払われる手数料が原告の提供した労務それ自体の対価であるとはいい難い。
 エ 原告は、被告との代理店契約に基づき、独立した事業者として本件業務を行っていたというべきであって、原告が被告の商業使用人であるということはできない。したがって、争点②について判断するまでもなく、原告の主位的請求は採用できない。 

(2)予備的主張②(争点④)
 ア 原告は、原告が被告の代理商であったとしても、被告とNらとの間に黙示の雇用契約が成立していたと主張するので、以下検討する。
 イ 原告は、自ら面接した上でNらの採用を決定し、Nらとの間で雇用契約を締結したものであり、その過程に被告が関与したとは認められない。また、被告からの指示については、一部、書面によりNらに伝えられたり、Nらが直接指示等を受けたりしていたものもあるとはいえ、基本的には、支部長会議等において原告が被告から伝達を受け、それを更に原告が従業員らに伝達していたものであって、被告からNらに対し直接の指揮命令が行われていたものではない。
   また、被告がNらの労務管理を行っていたと認めるに足りる証拠はなく、Nらの給与も、原告に代わって被告が振込業務を代行していたにすぎず、原告によって支払われていたものである。
   加えて、Oは、被告に対し、自身が被告の従業員ではなく原告の従業員である旨の発言を行っており、O自身もそのような認識であったことがうかがわれる。
 ウ 被告とNらとの間に黙示の雇用契約が成立していたみることは困難である。したがって、その余の点(注:争点⑤のことと思われる。)について判断するまでもなく、原告の予備的主張②は理由がない。

(3)結論
   原告の請求は理由がないから、棄却する。