東京地裁平成30年11月21日判決(労働判例1204号83頁)

セブンーイレブン・ジャパン(共同加盟店主)事件(確定)


【事案の概要】

(1)原告は、昭和17年〇月〇日生まれの男性であり、コンビニエンス・ストアの経営等を目的とするA企画有限会社(以下「A企画」という。)が平成7年4月3日に設立されて以降、同社の代表取締役を務めている。
   被告は、「セブンーイレブン・システム」と称するコンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンの運営等をしている株式会社である。

(2)原告は、従前より酒屋を経営していたところ、平成5年5月15日、被告との間で、別紙1「加盟店基本契約書」(略)のとおり、被告が原告に対して上記(1)のフランチャイズ・チェーンの加盟店であるセブンーイレブンC店(以下「C店」という。)を経営することを許諾し、かつ、経営指導、技術援助等を行い、原告が被告に対してチャージを支払うことなどを内容とする加盟店基本契約(以下「本件基本契約①」という。)を締結し、同年10年13日、同契約に基づいて、同店を開店した。なお、原告は、本件基本契約①を締結した際、加盟店付属契約書に署名・押印した。
   原告と被告は、平成13年6月25日、C店についての中途解約に関する協定書(以下「本件協定書」という。)を交わし、同年7月1日をもって本件基本契約①を中途解約すること、原告と被告との間には何らの債権債務の関係のないことを確認したことなどを合意した(なお、同合意の有効性については、当事者間に争いがある。)。

(3)原告の長女の配偶者であるB氏(以下「B氏」という。)は、平成8年2月29日、被告との間で、別紙1「加盟店基本契約書」(略)のとおり、被告がB氏に対して上記(1)のフランチャイズ・チェーンの加盟店であるセブンーイレブンD店(以下「D店」といい、C店と併せて「本件各店舗」という。)を経営することを許諾し、かつ、経営指導、技術援助等を行い、B氏が被告に対してチャージを支払うことなどを内容とする加盟店基本契約(以下「本件基本契約②」といい、本件基本契約①と併せて「本件各基本契約」という。)を締結し、同年9年19日、同契約に基づいて、同店を開店した。なお、B氏は、本件基本契約②を締結した際、加盟店付属契約書に署名・押印した。
   A企画は、平成10年12月4日、被告に対し、共同フランチャイジーとしてD店を経営し、本件基本契約②をB氏と連帯して履行することを約した。

(4)被告は、平成16年に、B氏及びA企画(以下「B氏ら」という。)が正当な理由なくD店の売上金等を被告に送金しないとして、本件基本契約②に基づき、被告がB氏らに対し、B氏らに代わり同店について売上及び金銭出納管理をすることができる地位にあることを仮に定める仮処分命令を仙台地方裁判所に申し立て、同裁判所は、同年3月8日、その旨の仮処分決定をした。
   被告は、同年12年30日、E店の売上及び金銭出納管理のため、被告の従業員であるE氏、F氏及びG氏(以下、これらの3名を併せて「E氏ら」という。)をして、同店内に金庫を台車に載せて運び入れさせた。

(5)被告は、B氏らに対し、本件基本契約②に基づき、平成15年7月19日から平成17年4月25日までの間のD店の毎日の総売上金等の合計5332万6787円の支払を求める訴えを仙台地方裁判所に提起し、同裁判所は、同年8月4日、被告の請求を全部認容する旨の仮執行宣言付き判決(以下「前訴判決」という。)を言い渡し、同判決は、その後の仙台高等裁判所による控訴棄却判決、最高裁判所による上告棄却及び上告不受理決定により確定した。
   同月31日、前件判決を債務名義としてD店内の商品等に対する動産執行が行われた。また、被告は、同日、B氏らに対し、B氏らに本件基本契約②第27条第1項及び第2項に違反する行為があり、同第47条第2項第1号に定める被告による契約解除事由に該当することから、同日をもって同契約を解除する旨を通知した(なお、同解除の有効性については、当事者間に争いがある。)。


【争点】

(1)主位的請求及び予備的請求に共通する争点
   原告が労働基準法第9条の「労働者」及び労働契約法第2条第1項所定の「労働者」(以下、これらを併せて単に「労働者」という。)に該当するか否か(争点1)
(2)主位的請求に関する争点
 ア 被告には、原告が労働者に該当するにもかかわらず、原告に対して、賃金の支払を怠る、使用者としての安全配慮義務に反して傷害を負わせる、無効な解雇を行うといった不法行為があるか否か(争点2)
 イ 被告の不法行為による原告の損害の有無及びその額(争点3)
 ウ 原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権につき、消滅時効の成否等(争点4)
(3)予備的請求に関する争点
   原告の被告に対する労働契約に基づく未払賃金請求権の有無(争点5)
   以下、裁判所の判断の概要を示す。


【裁判所の判断】

(1)争点1(原告が労働者に該当するか否か)について
 ア 原告が労働基準法第9条の「労働者」及び労働契約法第2条第1項の各規定によれば、労働者とは、使用従属性の要件を満たす者、すなわち、使用者の指揮監督の下に労務を提供し、使用者から労務の提供の対価として報酬を支払われる者をいうと解される。
   しかし、【事案の概要】(1)から(3)までのとおり、原告は、個人もしくはA企画の代表取締役として、被告との間で、本件各店舗の経営に関するフランチャイズ契約である本件各基本契約を締結し、同契約に基づき、独立の事業者(第2条)として、本件各店舗を経営していたものであって(原告自身も、自身が本件各店舗の経営者として、同店舗を経営していたことを自任している(原告本人)。)、このことは、原告が労働者であることと本質的に相容れないものである。
 イ これに対し、原告は、①業務遂行上の指揮監督、②時間的・場所的拘束性、③代替性、④報酬の算定・支払方法等及び⑤その他の事情といった各観点から原告の就労実態をみれば、使用従属性が認められ、原告が労働者に該当すると主張する。
   しかし、以下のとおり、原告が指摘する各事情は、いずれも上記アの原告の事業者性を減殺して、原告の労働者性を積極的に肯定できるまでの事情とはいえず、原告は労働者に該当しないというべきである。
  a)①業務遂行上の指揮監督について
   原告は、本件各店舗の運営に際して、情報システムにより仕入商品及び販売商品の種類・数量まで把握され、商品についても被告の推奨仕入先から被告を通じて仕入れることが事実上強制され、被告の方針と異なることを行えば、すぐに店舗経営相談員(オペレーション・フィールド・カウンセラー。以下「OFC」という。)が店舗事務所に立ち入り監督するなど、被告から業務遂行上の指揮監督を受けていたと主張する。
   しかし、【事案の概要】(2)(3)のとおり、本件各基本契約は、被告が、原告及びB氏らに対して、セブンーイレブン・システムによるコンビニエンス・ストア加盟店(以下「セブンーイレブン店」という。)を経営することを許諾するとともに、本部として継続的に同システムによる経営の指導、技術援助及びサービスを行うことを約し、原告及びB氏らが、被告に対して、セブンーイレブン店の経営を行い、これについて被告に一定の対価であるセブン―イレブン・チャージを支払うことを約することなどを内容とするものであり(第1条以下)、原告及びB氏らの労働それ自体の提供が契約の目的とされているものではない。本件各基本契約の上記内容からすれば、被告が本件各店舗の仕入を援助し、その販売促進に協力すること(第28条)は、同契約に基づく被告の業務の遂行を行うものであり、使用者がその権限において行う労働者に対する指導監督とはその性質がおよそ異なるものである。
   このうち商品の仕入については、原告及びB氏らが、本件各基本契約において、被告の推薦した仕入先や被告の関連会社から商品を仕入れ、又は被告の推薦した商品のみを仕入れることを義務付けられていなかった(30条)。しかし、実際には、コンビニエンス・ストアにおいて販売される多種多様な商品について、仕入ルートを独自に開拓して安定的かつ継続的な仕入れを行ったり、いかなる商品をどの程度仕入れるかを適時適切に判断したりすることは困難であると考えられる。そして、そのような実情があるからこそ、原告及びB氏らにとっては、被告との間で本件各基本契約を締結し、被告に一定の対価を支払って迄セブン―イレブン店の経営を行うメリットがあるのである。よって、原告が主張するとおり、被告の推薦する仕入先から被告を通じて仕入れるほかないという実情があるとしても、そのことをもって直ちに原告の事業性が否定されるものではない。
 b)②時間的・場所的拘束性及び③代替性について
   原告は、被告から年中無休24時間での本件各店舗の運営という労務の提供を強制され、時間的・場所的に強い拘束を受けていたなどと主著する。
   しかし、【事案の概要】(2)(3)のとおり、原告及びB氏らが本件各店舗以外の店舗におけるセブン―イレブン店の営業を許されておらず、また、本件各店舗において年中無休24時間の営業が義務付けられていたのは、本件各基本契約(第5条及び第24条)及び加盟店付属契約(第4条の第3項)に基づくものである。
   また、上記a)のとおり、本件各基本契約は、原告及びB氏らの労働それ自体の提供が契約の目的とされているものではなく、原告及びB氏が本件各店舗の店舗業務を自ら行うか、行うとしてどの程度の時間行うかは、経営者である原告及びB氏の判断に委ねられていたものである(第2条)。そして、原告の親族や原告が雇用したアルバイト従業員が本件各店舗の店舗業務を行っていたこと(原告が主張する労務提供の代替性があること)は、原告の労働者性を否定する方向に働く事情である。
  c)④報酬の算定・支払方法等について
   原告は、原告が労働者に該当することを基礎づける事情として、本件各基本契約において、原告(及びB氏ら)が、毎日、本件各店舗の売上金の金額を被告に送金した上で、オープンアカウント(本件各基本契約の付属明細書(ホ)第3項参照)によりこれを管理していた被告から月次引出金、四半期引出金及び利益剰余金の形で送金を受けることとなっていたこと(第19条、第27条、第40条等)、最低保証制度が導入されていたこと(第42条)、本件各店舗の人件費が被告から支払われていたことといった事情を挙げる。
   しかし、本件各基本契約において、いかなる方法により貸借処理を行い、また、最低保証制度を設けるか否かは、原則として、いずれも事業主である原告及びB氏らと被告において当該フランチャイズ契約の内容をどのように設定するかという問題にとどまる。よって、上記の事情から直ちに、原告の事業者性が否定され、原告が労働者に該当するということはできない。
   また、原告が、雇用していた本件各店舗のアルバイト従業員の給与は、本件各基本契約に基づき、被告が支払代行をしていた(第18条第4項及び付属明細書(ホ)第2項)ものの、原告がその額を決定し、その原資を負担するとともに、同給与をA企画の経費として計上していたこと(原告本人)からすると、これらの同給与に関する事情を全体としてみれば、むしろ、原告の労働者性を否定する方向に働く事情であるということができる。
  d)⑤その他の事情について 略
 ウ 以上によれば、原告が労働者に該当すると認めることはできない。

(2)争点2(被告には、原告が労働者に該当するにもかかわらず、原告に対して、賃金の支払を怠る、使用者としての安全配慮義務に反して傷害を負わせる、無効な解雇を行うといった不法行為があるか否か)及び争点4(原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権につき、消滅時効の成否等)について
 ア 原告は、原告が労働者に該当することを前提として、被告には、原告に対して、①原告及びその家族の本件各店舗における労務提供について割増賃金等の賃金の支払を怠る、②使用者としての安全配慮義務に反して、その従業員らに強盗致傷行為を行わせる、③無効な解雇を行い、その後の賃金を支払わないといった不法行為があると主張する。
   しかし、上記(1)のとおり、原告は労働者に該当しないから、原告の主張はいずれもその前提を欠き、採用することができない。
 イ なお、原告の上記アの主張のうち②の点については、原告が労働者に該当しない場合であっても、被告が不法行為責任を負うことがあり得るものである。
   しかし、仮に被告が主張するとおり、原告が被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を有していたとしても、原告の主張によっても、本件訴訟提起時点で同請求権について既に消滅時効が完成していることが明らかである。被告は同時効を援用しており、上記請求権に基づく原告の請求を認めることはできない。
   したがって、原告の被告に対する不法行為に基づく請求を認めることはできない。

(3)争点5(原告の被告に対する労働契約に基づく未払賃金請求権の有無)について
   原告は、原告と被告との間の法律関係が労働契約であることを前提として、平成27年10月3日以降の賃金の支払を求める。
   しかし、上記(1)のとおり、原告は労働者に該当せず、そもそも、原告と被告との間の法律関係が労働契約であるということはできないから、原告の上記請求を認めることもできない。

(4)結論
   以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求(注:主位的請求の請求額は、11億5064万3616、予備的請求の請求額は、6027万8005である。)はいずれも理由がないから、これらを棄却する。