東京地裁平成31年2月8日判決(自保ジャーナル2048号117頁)

大型の冷蔵冷凍車の中古車市場は存在することから、原告車の時価を、減価償却の方法によらずに、中古車市場における販売価格を参照して算定た事例(確定状況不明)


【事案の概要】

(1)次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
 ア 発生日時 平成28年7月19午後7時25分頃
 イ 発生場所 愛知県小牧市内B高速道路上り線路線上
 ウ 原告車  原告が所有し、Aが運転する大型貨物自動車(冷蔵冷凍車)
 エ 被告車  Cが運転する普通乗用自動車
 オ 事故態様 被告車が高速道路を逆走して原告車と正面衝突した。

(2)原告は、貨物運送を目的とする会社である。
   被告DはCの妻(相続分2分の1)、被告E、同F及び同GはCの子(相続分各6分の1)である。
   被告保険会社は、Cとの間で保険契約を締結した者であり、同保険契約上の直接請求権に基づき、本件事故について、原告の被告Dらに対する判決の確定を条件として、原告に対して被告Dらが負担する損害賠償額を支払う義務を負う。

(3)原告車は、車両総重量2万4,950㎏の冷蔵冷凍車であり、初度登録は平成21年12、本件事故時点までの走行距離は約103万8,000であった。
   本件事故による原告車の損傷の修理には1,235万2,705円を要する。


【争点】

   原告の損害額
(1)車両損害(争点1)
(2)休車損(争点2)
(3)営業損害(取引の打切り)
(4)営業損害(余剰人員の給与)
(5)保管料
   以下、裁判所の判断の概要を示す。


   なお、争点1に関する被告らの主張は、以下のとおりである。
 ア 冷蔵冷凍車については、中古車市場が形成されておらず、同等の車両を取得し得る価格を算定することが困難であるため、原告車の時価減価償却の方法によって算定すべきである。
   原告車は、初度登録が平成21年、走行距離が100万㎞以上の冷蔵冷凍車であり、本件事故時において、既に相当な距離を走行し、耐用年数(4年又は5年)を超過して使用していた。そうすると、原告車の時価は、新車価格2,460万円の1である246万円とすべきであり、これは修理費(注:1,235万2,705)を下回るため、経済的全損として、車両損害は246万円となる。仮に耐用年数を冷蔵冷凍車の平均車齢である10として定率法を用いて計算しても、本件事故時(経過年数7年)の時価291万8,848である。


【裁判所の判断】

(1)車両損害(争点1)
 ア 原告は、平成21年12月、H社から冷凍食品等の運送業務を受注することができることとなり、冷蔵冷凍庫である原告車を購入した。
   原告車は、車両総重量2万4,950㎏の冷蔵冷凍車(初度登録平成21年12)であり、4軸低床、総輪エアサスペンションなど、H社が要求する仕様に対応して製造され、専らH社から受注する運送業務に使用されていた。
   原告車については、平成24年12月にエンジン、エアサスペンション及びパワーステアリング等の交換がされ、平成27年7月には、側面衝突の交通事故に遭ったため、平成28年1月にパネル交換等がされた。原告車の本件事故時点までの走行距離は約103万8,000であった。
 イ インターネット上の中古車販売サイトは、原告車と同社種である大型冷蔵冷凍車について、
  ・平成28年12月に税込価格1,263万6,000円(平成19年式、走行距離48万8,000㎞)で販売されていたもの
  ・平成29年6月に税込価格1,361万円(初度登録平成20年3月、走行距離38万5,000㎞)で販売されていたもの
  ・平成30年2月に税込価格756万円(平成22年式、走行距離68万8,000㎞)で販売されていたものがある。
   平成30年2月に販売されていた前記2台と同じウェブサイトでは、価格は応相談として、同車種の冷蔵冷凍車が他に14台販売されていた。
   他方で、原告が平成28年8月に株式会社Iから取り付けた中古の冷蔵冷凍車の見積書では、
  ・本体価格1,500万円(初度登録平成23年9月、走行距離68万8,120㎞)
  ・本体価格1,050万円(初度登録平成21年9月、走行距離29万4,591㎞)
  ・本体価格880万円(初度登録平成17年12月、走行距離69万9,096㎞)
の3台が提示された。
 ウ 以上の事実によれば、大型の冷蔵冷凍車の中古車市場は存在するといえるから、原告車の時価は、減価償却の方法によって算定すべきではなく、中古車市場における販売価格を参照して算定するのが妥当である。
   そして、原告車は、初度登録から本件事故まで約7年を経過し、その走行距離が100万㎞を超えている車両であって、前記イの各車両と比べても使用期間又は走行距離が長いこと、他方で、エンジン等の交換がされていることを考慮すると、原告車の時価800万円であると認められる。
   これに加えて、原告車と同等の冷蔵冷凍車を取得するには、消費税相当額64万円を要するほか、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、その他諸費用として60万円を要すること、原告車と同じ業務に使用するにはH社が要求する仕様を踏まえた整備が必要であり、その費用として50万円を要することが認められるが、これを上回る費用を要すると認めるに足りる証拠はない。
   したがって、原告車と同等の車両の取得に要する費用は、車両の時価に前記各費用を合わせた974万円であり、これは原告車の修理費(1,235万2,705円)を下回るから、原告車は経済的全損といえ、本件事故による車両損害974万円である。

(2)休車損(争点2)
 ア 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、
  ・原告車の稼働による売上が、平成28年4月から同年6月までの3ヶ月間において、510万8,400円であったこと
  ・平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度において、原告の運送収入は2億7,109万1,000円、運送業務に係る変動費は1億7,988万4,000円(人件費、燃料油脂費、修繕費、事故賠償費、道路使用料及び「その他」の経費の合計額)であって、利益率は33%であったことが認められる。
   そうすると、原告車の稼働による利益は、1ヶ月につき56万1,924円(=510万8,400円÷3×33%)となる。
 イ また、証拠(略)によれば、原告は、原告車の他に大型の冷蔵冷凍庫を保有していなかったことが認められる。
   そして、原告車の損傷状況等に関する被告保険会社による調査が本件事故後約1ヶ月を経過した平成28年8月22日に行われたこと、前記(1)ウのとおり、取得した車両を原告車に替えて使用するには相応の整備を要することからすれば、原告車の買替えに要する相当な期間は4ヶ月間であると認められる。
 ウ したがって、本件事故によって、原告には4ヶ月にわたり原告車を使用することができなかったことによる休車損224万7,697円(=56万1,924円×4)が生じたと認められる。

(3)営業損害(取引の打切り)
   H社との間の取引は本件事故から6ヶ月以上の期間が経過した後に原告の申し入れによって終了したものであるから、この取引の終了による逸失利益は本件事故による損害とは認められない(詳細については、省略する。)。

(4)営業損害(余剰人員の給与)
   本件事故による損害とは認められない(詳細については、省略する。)。

(5)保管料
   前記(2)イで認定したとおり、原告車の買替えに要する期間は本件事故後4ヶ月間であるから、保管料として本件事故と相当因果関係が認められるのは、この期間に係るものに限られる。
   したがって、平成28年8月18日(注:修理工場における保管料の発生日である。)から3ヶ月分の保管料9万7,200円は、本件事故による損害であると認められる。

(6)結論
   以上によれば、原告の損害は、車両損害974万円、休車損224万7,696円及び保管料9万7,200円に弁護士費用120万円を加えた1,328万4,896円(注:請求額は、4,508万2,829円)となる(一部認容)。