大阪地裁令和元年9月4日判決(自保ジャーナル2058号24頁)

死亡結果の発生には本件事故による傷害結果のほか被害者の身体的素因としての既往症が相当に寄与しているとして、4割の素因減額をした事例(確定)


【事案の概要】

(1)交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
 ア 発生日時 平成28年8月18日午前10時18分頃
 イ 発生場所 大阪府豊中市内の○○自動車道下り(以下「本件道路」という。)付近(以下「本件事故現場」という。)
 ウ 原告車  原告C(当時42歳)が運転し、(当時75歳)及び原告B(当時67歳)が同乗する普通乗用自動車
 エ 被告車  被告Y(当時23歳)が運転し、被告W(当時20歳)が同乗する普通乗用自動車(被告車の所有者は株式会社○○であり、被告Zは、売主に所有権を留保するとの約定の下、被告車を購入した。
 オ 事故態様 被告車が、法定最高速度が時速100㎞である本件道路の第2通行帯を、東から西に向かい時速140㎞~150㎞の速度で進行し、本件事故現場付近で第2通行帯から第1通行帯に進路変更した際、第1通行帯を被告車と同一方向に先行して進行中の原告車左後部に被告車右前前部が衝突し、原告車が横転した。
なお、被告Yは、本件事故当時、公安委員会の運転免許を受けていなかった。

(2)Aは、本件事故により、両側急性硬膜下血腫、肺挫傷、右腰動脈損傷右後腹膜血腫等の傷害を負い、平成28年8月18日から同年9月8日までの22日間、D病院に入院した。
   Aは、平成28年9月8日に死亡し(死亡時の年齢は75歳)、その妻である原告B及びその子である原告Cは、Aの損害賠償請求権を含む権利義務を法定相続分に応じて各2分の1ずつ相続した。

(3)原告Bは、本件事故により、右肩部打撲傷、右肩鎖間接脱臼等の傷害を負い、次のとおり入通院した。
 ア D病院 平成28年8月18日~同年9月9日入院(23日)
 イ E整形外科 平成28年9月12日~平成29年5月8日通院(実日数63日)
 ウ F眼科・皮膚科 平成28年9月16日通院(実日数1日)
   E整形外科の医師は、平成29年5月8日をもって、原告の症状が固定したと診断した(当時の年齢は68歳)。

(4)被告車について自賠責保険を締結した補助参加人は、原告Bの本件事故後の症状のうち、右肩鎖関節脱臼後の右鎖骨の変形傷害については、裸体になったとき、変形が明らかに分かる程度のものと捉えられることから、自賠法施行令別表第二(以下、省略)12級5号に該当し、②右肩鎖関節脱臼に伴う右肩関節の機能障害については、他動値による可動域が健側(左肩関節)の可動域角度の4分の3以下に制限されていることから、12級6号に該当するものと判断し、これらを併合した結果、原告Bの後遺障害等級を併合11級と判断した。


【争点】

(1)被告Wの民法719条2項に基づく責任の有無(争点1
(2)被告Zの自賠法3条に基づく責任の有無(争点2
(3)本件事故とAの死亡との因果関係、Aの余命及び素因減額(争点3
(4)Aの損害(争点4)
(5)原告Bの後遺障害の内容及び程度、症状固定の時期(争点5
(6)原告Bの損害(争点6)
(7)原告Cの損害(争点7)
   以下、主に上記(1)~(3)及び(5)についての、裁判所の判断の概要を示す。


【裁判所の判断】

(1)争点1(被告Wの民法719条2項に基づく責任の有無)について

 ア 被告Yは、被告車を運転し、第2通行帯から第1通行帯に進路変更するに当たり、前方左右を注視し、道路の安全を確認して車線変更すべき注意義務があるのにこれを怠り、前方左右を注視せず、道路の安全を十分に確認せず、時速約140~150㎞で車線変更した過失がある(以下、この過失行為を「本件過失行為」という。)。
   そして、原告らは、被告Wが、被告Yに缶入りアルコール飲料を渡すなどして、被告Yによる本件過失行為を幇助したと主張するので、検討する。
 イ 被告Wは、被告車を運転中の被告Yから、被告Wの飲んでいた缶酎ハイを飲みたいと言われ、缶酎ハイを被告Yに渡し、被告Yは缶酎ハイを飲酒し、被告車の運行を継続したところ、被告Yの行為は、被告Yの飲酒運転を物理的にも心理的にも容易にし、これを助長、促進させたことは明らかであるから、被告Wは被告Yによる飲酒運転を幇助したものということができる。
   しかし、原告らは、本件訴訟において、Aの身体及び生命並びに原告Bの身体という権利が侵害されたことを理由として、損害賠償の支払を求めている以上、ここで問題とすべきであるのは、上記の権利を侵害する原因行為となった本件過失行為であるから、被告Wが被告Yに缶酎ハイを渡したことが本件過失行為の幇助に該当するものとして、被告Wに法的責任を負担させるためには、少なくとも、被告Yの飲酒運転と本件過失行為との間に因果関係があることが必要である。
 ウ 被告Yは、本件事故当時、被告Zが実質的に所有する被告車に被告Wを乗せ、買い物に向かうところであり、当時23歳であった被告Yは、同居していた交際相手の被告Wに格好良いところを見せようとして、高速道路においてスピードを出し、次々と車を追い抜いていったのであるが、このようなことは、飲酒の影響によらずに行なわれることがあり得るのであり、このような状況で、進路の安全を十分に確認せず、制限速度を大幅に超過したまま車線変更をすることも、飲酒による影響にかかわらず起こり得るものである。
   本件に提出された証拠を基礎とする限り、被告Yの飲酒行為と本件過失行為との間に因果関係があると認めることは困難であるといわざるを得ず、従って、被告Wが被告Yに缶酎ハイを渡したことが本件過失行為の幇助に該当するものとして、被告Wに法的責任を負担させることも困難であるといわざるを得ない。
 エ 以上によれば、被告Wに民法719条2項の責任があるということはできない。
   また、被告Wが、被告Yに缶入りアルコール飲料を渡すなどした行為と本件事故との間の因果関係を認めることも困難である以上、民法709条及び711条の責任があるということもできない。

(2)争点2(被告Zの自賠法3条に基づく責任の有無)について

 ア 被告Zは、平成28年6月、売主に所有権を留保するとの約定の下、被告車(平成17年11月に初度登録)を購入し、被告車を適法に使用する権原を有しており、その購入後、実際に、被告車の実質的な所有者として、被告車を管理支配していたことからすれば、特段の事情のない限り、被告車の運行が社会に害悪をもたらさないように監視、監督すべき立場にある者として、自賠法3条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者に当たると解すべきである。
 イ 被告Yは、本件事故前日の夜から本件事故当日の朝までの間に、被告Zに無断で、同人の勤務先の事務所にある被告Zが使用している机の引出しから、2本ある被告車の鍵のうちの1本の鍵(以下「予備の鍵」という。)を持出し、被告車を運転し、居住していたマンションの一室に帰宅し、その後、本件事故を発生させたのであるが、以下の事実が認められる。
  a)被告車の予備の鍵が保管されていたのは、職場内にある机の引出しの中であり、鍵もかかっていなかったことから、客観的には、被告Zが勤務する会社と被告Yが勤務する会社(注:両社の経営者は同一である。)の従業員は、誰でも予備の鍵を持ち出すことが容易な状況(注:両社の事務所は、同じ建物の同じフロアで隣接し、建物の構造上、内部で物理的につながっており、両社の従業員は互いに行き来することができる状態にあった。)にあり、被告Zは、これを防止する措置は執っていなかったこと
  b)被告Yは、被告車を領得する意思で使用したのではなく、本件事故前に使用した際と同様に、その使用後は、本件駐車場に返還する意思で被告車を使用していたと推認されること
  c)被告Yが被告車を本件駐車場から持ち出してから本件事故までは半日程度しか経っていないこと
  d)被告Yと被告Zの関係からして、被告Zは、被告Yが被告車を使用していることを知れば直ちにその返還を求め得る立場にあり、被告Yも返還を求められれば、これを拒むとは考え難いことからすれば、本件事故前日又は当日の被告Yによる被告車の運行が、被告Zの承諾を得たものではなく、かつ、被告Zによる容認の下にされたものではなかったとしても、被告Zにおいて、被告車の運行が社会に害悪をもたらさないように監視、監督すべき立場を未だ免れる状況にあったとはいえず、他に特段の事情があると認めるに足りる証拠もない。
 ウ 被告Zは、自賠法3条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者に当たり、原告らに対し、自賠法3条に基づく責任を負う。

(3)争点3(本件事故とAの死亡との因果関係、Aの余命及び素因減額)について

 ア 認定事実
  a)既往症
   Aは、本件事故当時、直腸がん術後並びにこれの肝転移術後及び肺転移がある状態(いわゆるステージⅣ)であった。Aは、本件事故当時、制がん剤であるスチバーガを服用しており、スチバーガの副作用により、平成27年に脳梗塞も発症していた。
   Aは、左水腎症の既往症を有しており、腎機能も低下した状態であった。
   Aは、心房細動(不整脈の一種であり、血栓症を発症しやすい。)があるため、抗凝固薬であるワーファリンも服用していた。
  b)生活状況等
   Aは、本件事故時点ではその病状は安定しており、ろ過器の販売、配送、保守管理等を行なうG社の代表取締役の地位にあり、かつ、ろ過器の販売等の実際に業務に当たっていた。
  c)平成28年8月18日
   Aは、本件事故後、D病院に救急搬送され、同病院に入院した。入院時には重篤感はなかったが、血圧は60~90台(普段は120台)と低値であり、左臀部、腰部及び右下腹部皮下に浸出が認められたため、止血のための圧迫が開始された。医師は、ワーファリン内服中の多発外傷等による出血性ショックと診断したが、輸血が行なわれた結果、一旦、血圧は120台に回復した。しかし、ICU入室後に右L4腰動脈より血液漏出を認めたため、輸血及びカテーテルによるコイル動脈塞栓術が行なわれた。
  d)平成28年8月19日
   D病院の医師は、腹腔内に出血があるため、抗凝固薬を使用することができない状況にあるし、外傷による頭蓋内出血があり、頭蓋内出血の拡大及び血栓症に伴う脳梗塞の併発により、意識レベルの変化を来す危険があると判断していた。
   D病医院の医師は、Aらに対し、①腹腔内を含む複数箇所で出血があり、カテーテルを用いた治療によって止血の措置を執ったが、再出血の可能性を否定することはできないこと、②もともと、心房細動のために抗凝固薬剤を服用していたが、出血があるためその服用を中止したため、脳梗塞等のリスクが上昇していること、③腎機能の悪化により透析が必要になる可能性があることなどを説明した。
  e) 平成28年8月20日
Aは、同日午後、その意識レベルが低下し、痛みを訴えるなどしたため、MRI検査が実施されたところ、新たに脳梗塞を発症していることが認められた。
   そして、頭蓋内・後腹膜・皮下の外傷性出血を止める治療を優先すれば、脳梗塞については、根本的な治療に着手することができず、経過観察するしかなくなり、他方、脳梗塞に対する治療として血液を固まりにくくする治療を優先すれば、止血しつつある部位からの出血の増加と貧血の進行、頭蓋内の出血の増加による意識レベルの低下、ひいては、死亡という最悪の事態を招きかねない状態であった。医師は、この段階では止血を優先させるべきであると判断し、止血が行なわれることになった。
  f) 平成28年8月21日以降
   医師は、同日、脳梗塞の原因につき、本件事故により様々な部位からの出血があったことから、心房細動による脳梗塞予防のために内服していたワーフェリンの内服を中止したことによる影響ではないかと考えるとともに、本件事故による頭蓋内出血、体中の出血などのため、腎機能及び肺機能なども影響を受けており、直腸がんの肝転移及び肺転移により肝機能及び肺機能が低下しており、予備能もない状態であると考えた。
   そのため、医師は、積極的な治療による救命や、回復の可能性の程度には疑問を感じており、その旨を伝えられた原告らの意向も踏まえ、Aに対しては苦痛を緩和する治療を行なう方針を執ることとした
また、医師は、同月24日、Aについては、腎機能の低下により、全身状態が増悪し、死亡する可能性が高いとの予測もしていた。
  g)同年9月4日、Aの血圧は上昇せず、尿量も改善しない状態となった。医師が、原告らに対し、上記の状況を説明したところ、A及び原告らは、Aの苦痛の除去を優先して行なうことを希望した。同月8日、Aは死亡した。
  h)診断等の記載
  ・死亡診断書
   直接の死因は多臓器不全であり、その原因は出血性ショック、さらにその原因は後腹膜血腫である。直接には死因に関係しないが、経過に影響を与えた傷病として、直腸がんの多発転移がある。死因の種類は交通事故による不慮の外因死であり、直腸がんの多発転移は、直接には死因に関係しないものの傷病経過には影響を与えた。
  ・医師の診断書 略
  ・D病院の医師による検察官に対する回答書 略
  i)直腸がんの多発転移と余命に関する知見
   平成23年におけるステージⅣの大腸がん(直腸がんも含む。)の3年生存率は、実測生存率で18.5%、相対生存率で30.3%である。
 イ 本件事故とAの死との間の因果関係
   アb)の事情に加え、アh)の診断書の記載内容から、本件事故がなければ、Aが平成28年9月上旬に死亡することはなかったと推認され、アc)~f)の本件事故後の経緯に照らせば、本件事故とAの死亡との間には相当因果関係がある。
 ウ Aの余命
   平成28年における75歳男性の平均余命は12年であるところ、アa)及びi)のとおり、Aは、本件事故時点において、直腸がんが肺及び肝臓に転移した状態(ステージⅣ)であり、ステージⅣまで至った直腸がんを含む大腸がん患者の3年生存率が、実測生存率で28.5%、相対生存率で30.3%であることからすると、3年生存率が約3割であり、本件事故時点ではその病状は安定していたことからすれば、Aの余命は少なくとも3年はあったものと推認される。
 エ 素因減額
   Aが、本件事故当時、直腸がんの肝臓及び肺への転移やこれらに伴う肝機能及び肺機能の低下に加え、心房細動により血栓ができやすく、抗凝固剤であるワーフェリンの服用が必要な状態でなければ、Aは、適切な治療を受ければ平成28年9月上旬に死亡することはなかったものと推認される。
   Aの上記死亡という結果の発生には、本件事故による傷害結果のみならず、Aの身体的素因としての既往症が相当に寄与しているのであって、本件事故の態様やそれによりAに生じた傷害の内容、Aの既往症の内容やそれがAの治療に及ぼした影響等を考慮すると、損害の公平な分担という見地から、4割の割合による素因減額をする。

(4)争点4(Aの損害)について

 ア 逸失利益 369万0,594円
  a)G社の代表取締役としての基礎収入:240万円、就労可能年数:2年
   Aが、本件事故当時、G社の代表取締役として、ろ過器の販売等を担当して、実際に業務を行い、年額240万円の収入を得ていたことから、上記の金額を基礎収入とするのが相当である。そして、Aの余命は3年の限度で認められるから、その就労可能年数は2年と認める。
  b) 老齢年金:62万円0,017円、支給年数:3年(注:Aの余命)
  c) 生活費控除率:40%
   Aは、妻である原告Bと同居し、上記の収入によって一家の整形を支えていた。
  d) 計算式:(240万円×1.8594+62万0,017円×2.7232)×(1-0.4)=369万0,594円
 イ 死亡慰謝料 3,000万0,175円
 ウ その他の損害 略

(5)争点5(原告Bの後遺障害の内容及び程度、症状固定の時期)について

 ア 認定事実
  a)原告Bは、平成28年8月18日、D病院に救急搬送された。医師は退院可能と判断したが、原告Bらが入院を希望したため、入院することになった。
  b)原告Bは、同月24日の時点で、同月27日又は同月28日の退院が予定されていたが、同月26日に炎症反応が上昇し、尿路感染症の発症又は血腫感染が疑われたため、退院は延期となった。
  c)同月29日、尿から大腸菌が検出されたため、抗生剤の点滴治療が開始された。同年9月1日、尿路感染症による発熱・炎症反応上昇であった可能性や血腫感染を起こしていた可能性が示唆され、同月5日の診療録には、尿路感染症であるとの記載がされた。
   同月6日、右肩関節の主要運動が屈曲60度、外転45度とされ、その可動域に制限があるとされた。
   同月8日、抗生剤の投与が終了するなどし、同月9日、D病院を退院した。
  d)原告Bは、平成28年9月12日、E整形外科に通院し、同日に実施されたレントゲン検査において、右肩鎖関節脱臼等を指摘された。そして、同月23日以降、継続してE整形外科に通院し、平成29年5月8日、症状固定との診断を受けた。
  e)原告Bの右肩鎖関節の屈曲及び外転の稼働域の推移は、次のとおりである(注:左肩鎖関節の可動域は、屈曲170度、外転170度である。)。
   平成28年9月12日    屈曲100度、外転90度
   同年10月25日       屈曲150度、外転140度
   平成29年1月10日    屈曲130度、外転100度
   同年2月27日 屈曲80度、外転60度
   同年5月8日             屈曲120度、外転100度
 イ 症状固定の時期
   ①被告Zが原告Bの症状固定時期として主張する、平成29年2月27日の原告Bの右肩鎖関節の可動域に比べ、同年5月8日の同関節の可動域に改善が認められること、②医師からも同日をもって症状固定との診断を受けていることなどから、同日をもって、原告Bの症状は固定したものと認められる。
 ウ 原告Bの後遺障害の内容及び程度
  a)原告Bの後遺障害は、全体として併合11級に該当する(注:自賠責の判断と同じ。)。
  b)補助参加人は、右肩鎖関節の可動域が平成28年10月25日までに改善し、その後、平成29年2月27日までに悪化しているのは不自然な経過であるなどと主張する。
   しかし、①一般に肩鎖関節脱臼では、治療の過程で、痛みが増したり和らいだりするために、肩関節の可動域が変動し得るとされていること、②原告Bが同年2月27日に右肩鎖骨遠位端の強い圧痛を訴えていたことを踏まえると、上記の主張を採用できない。
 エ 入院の必要性等
  a)被告らは、原告Bが、本件事故当日、医師から帰宅が可能であると判断されたにもかかわらず、その希望で入院したことから、原告Bには入院の必要がなかったと主張する。
   しかし、上記判断をした医師も、最終的は原告Bの入院を認めている。
  b)被告らは、本件事故と原告Bが尿路感染症にり患したこととの間には因果関係がなく、尿路感染症にり患したことで退院が延期されたことによる損害との間には因果関係がないとも主張する。
   しかし、原告Bの退院の延期が決定された平成28年8月26日時点において、尿路感染のみならず、本件事故によって生じた血腫の細菌感染も疑われ、これらに対する治療が開始・継続されたのであるから、本件事故と、原告Bの退院が延期され、その後、抗生剤治療が継続されたこととの間には相当因果関係がある。

(6)争点6(原告Bの損害)について

 ア 逸失利益 158万5.519円
  a)基礎収入:146万6,664円
   原告Bは、本件事故当時、営業事務、経理事務等を行い、役員報酬名目で年額146万6,664円を得ており、その全額が労務の対価であったことが認められる。
  b)労働能力喪失:14%、喪失期間:症状固定時から10年間
   原告B(症状固定時68歳)には、右肩鎖関節の可動域制限の後遺障害が残存し、これは12級6号に該当する(注:右鎖骨の変形障害については、当該障害により労働能力が低下するとは認められない。)。
  c) 計算式:146万6,664円×0.14×7.7217=158万5,519円
 イ (Aの死亡等による原告Bの)固有の慰謝料100万円
 ウ 傷害慰謝料 200万円
 エ 後遺障害慰謝料 400万円
 オ その他の損害 略

(7)争点7(原告Cの損害)について

   固有の慰謝料100万円

(8)結論

   原告Bの請求は、被告Y及び被告Zに対して1,673万3,762円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告Cの請求は、被告Y及び被告Zに対して1,060万4,685円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(一部認容)。