最高裁令和2年7月21日判決(裁判所HP)

リツイートにより写真に付加された著作者の氏名がトリミングされた形で表示される場合、それがツイッターの仕様によるものであり、かつ、ユーザーにおいて画像をクリックすれば氏名表示部分を見ることができるとしても、当該写真に係る著作者の氏名表示権の侵害が認められる旨判示した事例(確定)


【事案の概要】

   以下のとおりである。なお、知財高裁平成30年4月25日判決の【事案の概要】も参照。

(1)被上告人は、写真家であり、第1審判決別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作者である。
   上告人は、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)を運営する米国法人である。

(2)被上告人は、平成21年、本件写真の隅に「c」マーク及び自己の氏名をアルファベット表記した文字等(以下「本件氏名表示部分」という。)を付加した画像(以下「本件写真画像」という。)を自己のウェブサイトに掲載した。

(3)平成26年1月、原判決別紙アカウント目録記載「アカウント2」のツイッター上のアカウントにおいて、被上告人に無断で、本件写真画像を複製した画像の掲載を含むツイートが投稿された。
   これにより、本件写真画像を複製した第1審判決別紙流通情報目録記載2(2)の画像(以下「本件元画像」という。)が、同目録記載2(2)のURL(以下「本件画像ファイル保存用URL」という。)の画像ファイルとしてサーバーに保存された。

(4)その後、原判決別紙アカウント目録記載「アカウント3~5」のツイッター上の各アカウント(以下「本件各アカウント」という。)において、それぞれ、上記(3)のツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する、ツイッター上の再投稿)がされた(以下、それぞれのリツイートを「本件各リツイート」といい、これにより投稿されたメッセージ等を「本件各リツイート記事」という。また、本件各リツイートをした者を「本件各リツイート者」という。)。
   これにより、不特定の者が閲覧できる本件各アカウントの各タイムライン(個々のツイートが時系列順に表示されるページ)に、それぞれ第1審判決別紙流通情報目録記載3~5の各画像(以下「本件各表示画像」という。)が本件各リツイート記事の一部として表示されるようになった。本件各表示画像は、本件元画像の上部及び下部がトリミング(一部切除)された形となっており、そのため、本件氏名表示部分が表示されなくなっている。

(5)本件各アカウントの各タイムラインに本件各表示画像が表示されるのは、本件各リツイートにより同各タイムラインのウェブページ(第1審判決別紙流通情報目録記載3~5の各URLのウェブページ。以下「本件各ウェブページ」という。)に本件画像ファイル保存用URLの本件元画像ファイルへのリンク(いわゆるインラインリンク)が自動的に設定されるためである。
   すなわち、本件各リツイートがされることによって、自動的に、上記リンクを指示する情報及びリンク先の画像の表示の仕方(大きさ、配置等)を指定する情報を記述したHTML(ウェブページの構造等を記述する言語)等のデータ(以下「本件リンク画像表示データ」という。)が、本件各ウェブページ(リンク元のウェブページ)に係るサーバーの記録媒体に記憶される。インターネットを利用してウェブサイトを閲覧する者(以下「ユーザー」という。)が、本件各ウェブサイトにアクセスすると、自動的に、
  ①本件リンク画像表示データが、本件各ウェブページに係るサーバーから同ユーザーの端末に送信され、
  ②これにより、同ユーザーの操作を介することなく、本件元画像のデータ(リンク先のデータ)が、本件画像ファイル保存用URLに係るサーバーから上記端末に送信され、
  ③上記端末の画面上に当該画像が上記指定に従って表示される。
   上告人が提供しているツイッターのシステムにおいては、リンク先の画像の表示の仕方に関するHTML等の指定により、リンク先の元の画像とは縦横の大きさが異なる画像やトリミングされた画像が表示されることがあるところ、本件においても、これにより、本件各表示画像は、上記(4)のとおりトリミングされた形で上記端末の画面上に表示され、本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。


【争点】

   本件写真に係る被上告人の氏名表示権(以下「本件氏名表示権」という。)等の侵害の有無
   以下、裁判所の判断の概要を示す。


   なお、上告受理申立て理由の骨子は、以下とおりである。
 ア 所論1
   以下の理由から、原審の判断には著作権法の解釈適用の誤りがある。
  a)1-1
   本件各リツイート者は、本件各リツイートによって、著作権侵害となる著作物の利用をしていないから、著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」をしていない。
  b)1-2
   本件各ウェブサイトを閲覧するユーザーは、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができることから、本件各リツイート者は、本件写真につき「すでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示」(同条2項)しているといえる
 イ 所論2
   本件各リツイート者による本件リンク画像表示データの送信では、当該データの流通それ自体によって被上告人の権利が侵害されるものではないから、プロバイダ責任制限法4条1項1号の「侵害情報の流通によって」権利が侵害されたという要件を満たさず、また、本件各リツイート者は、被上告人の権利を直接侵害する情報である画像データについては、何ら特定電気通信設備の記録媒体への記録を行っていないから、同項の「侵害情報の発信者」の要件に該当しないので、原審の判断にはプロバイダ責任制限法の解釈適用の誤りがあるというべきである。


【裁判所の判断】

(1)所論1について
 ア 1-1について
   著作権法19条1項は、文言上その適用を、同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用により著作物の公衆への提供又は提示をする場合に限定していない。また、同法19条1項は、著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するものであると解されるが、その趣旨は、上記権利の侵害となる著作物の利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。そうすると、同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。
   したがって、本件各リツイート者が、本件各リツイートによって、上記権利の侵害となる著作物の利用をしていなくても、本件各ウェブページを閲覧するユーザーの端末の画面上に著作物である本件各表示画面を表示したことは、著作権法19条1項の「著作物の公衆への・・・提示」に当たるということができる。
 イ 1-2について
  a)前記【事案の概要】によれば、被上告人は、本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが、本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより、本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである(なお、このような画像の表示の仕方は、ツイッターのシステムの仕様によるものであるが、他方で、各リツイート者は、それを認識しているか否かにかかわらず、そのようなシステムを利用して本件各リツイートを行っており、上記の事態は、客観的には、その本件各リツイート者の行為によって現実に生ずるに至ったことが明らかである。)。
   また、本件各リツイート者は、本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて、他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。
  b)そして、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても、本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり、本件各ウェブページを閲覧するユーザーは、本件各表示画像をクリックしない限り、著作者名の表示を目にすることはない。また、同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。
   そうすると、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって、本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。
  c)小括
   以上によれば、本件各リツイート者は、本件各リツイートにより、本件氏名表示権を侵害したものというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。

(2)所論2について
 ア 前記【事案の概要】によれば、本件各リツイート者は、その主観的な認識いかんにかかわらず、本件各リツイートを行うことによって、前記【事案の概要】(5)のような本件元画像ファイルへのリンク及びその画像表示の仕方の指定に係る本件リンク画像表示データを、特定電気通信設備である本件各ウェブページに係るサーバーへの記録媒体に記録してユーザーの端末に送信し、これにより、リンク先である本件画像ファイル保存用URLに係るサーバーから同端末に本件元画像おデータを送信した上、同端末において上記指定に従って本件各表示画像をトリミングされた形で表示させ、本件氏名表示部分が表示されない状態をもたらし、本件氏名表示権を侵害したものである。
   そうすると、上記のように行われた本件リンク画像表示データの送信は、本件氏名表示権の侵害を直接的にもたらしているものというべきであって、本件においては、本件リンク画像表示データの流通によって被上告人の権利が侵害されたものということができ、本件各リツイート者は、「侵害情報」である本件リンク先画像表示データを特定電気通信設備の記録媒体に記録した者ということができる。
 イ 以上によれば、本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について、本件各リツイート者は、プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し、かつ、同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきである。所論の点に関する原審の判断は、是認することができる。

(3)結論
   以上のとおりであるから、論旨はいずれも採用することができない(上告棄却)。


 

東京地裁令和2年2月20日判決(コピライト710号30頁)

ログイン型SNSにおいて、当該ログイン状態を利用して投稿行為が行われたことの証明がなされていないことから、経由プロバイダに対する発信者情報開示請求が認められなかった事例(確定)


【事案の概要】

(1)氏名不詳者は、別紙投稿記事目録記載1ないし5の各投稿日欄の日付において、同目録の各内容欄記載の写真(以下「本件各写真」という。)を含む記事をインターネット上のウェブサイトである「インスタグラム」に投稿した(以下、同目録の番号に合せて「本件投稿行為1」ないし「本件投稿5」といい、本件投稿行為1ないし5を併せて「本件各投稿行為」という。)。
   本件各写真は、複数の写真をつなぎ合わせる形で構成されているところ、本件各写真には、原告が著作権を有する別紙著作物目録記載の各写真が利用されている。

(2)本件各写真が投稿された上記ウェブサイト(以下「本件サイト」という。)に記事を投稿するためには、予めユーザ名及びパスワード等を登録してアカウントを作成し、登録したユーザ名及びパスワードを用いてアカウントにログインする必要がある。
   本件各投稿行為は、いずれも「○○」というユーザ名のアカウント(以下「本件アカウント」という。)にログインした状態でなされた。

(3)本件サイトにおいては、あるアカウントに複数の者が同時にログインすることが可能であり、当該アカウントに対し複数のアクセス元からのログインが併存し得る。

(4)原告は、本件サイトを運営する訴外フェイスブック・インクから、本件アカウントへログインするための情報が発信された発信日時及び発信元のIPアドレスの開示を受けたところ、その内容は別紙発信者情報目録1(1)ないし(13)のとおりであった(以下、同目録記載1(1)ないし(13)で特定される各ログインを併せて「本件各ログイン」という。)。

(5)原告は、経由プロバイダである被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件各写真の投稿に用いられたアカウント同一のアカウントへのログインに用いられた別紙発信者情報目録1の各IPアドレス(以下「本件各IPアドレス」という。)を同目録記載1の発信日時頃に割り当てられていた者に係る同目録記載2の情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を求めた。
   なお、被告は、本件各発信者情報を保有している。


【争点】

(1)本件各発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」(法4条1項柱書)に当たるか否か(争点1)
(2)被告が「開示関係役務提供者」に該当するか(争点2)
(3)権利侵害の明白性(争点3)
(4)本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点4)
   以下、裁判所の判断の概要を示す。


   なお、争点1についての各当事者の主張は、概要、以下のとおりである。
  (原告の主張)
   「当該権利の侵害に係る発信者情報」は、問題となっている情報を現実に発信した際に把握される発信者情報に限定されるべきではなく、不法行為に基づく損害賠償責任等を負う者に関する情報が含まれる。なぜなら、上記の解釈を行わない限り、各投稿時の情報を保存しない本件サイトのようなログイン型SNSにおいては他人の権利を侵害した者を特定することが不可能となり、被害者の当該加害者に対する正当な権利行為の可能性が絶たれるからである。
   本件各投稿行為をした者と本件アカウントへログインした者は同一人物である。また、仮に、別人であったとしても、本件アカウントにログインした者は、本件アカウントの管理運営について密接な関連性があり、本件各投稿行為をした際の事情を把握していると考えられる以上、本件各投稿行為について損害賠償責任等を負う者といえ、本件各発信者情報は、そのような者に係る情報である以上、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当する。
  (被告の主張)
   法が、発信者情報の開示請求権を創設した反面、発信者のプライバシーや表現の自由、通信の秘密等に配慮し、その権利行使の要件として権利侵害の明白正等の厳格な要件を定めた趣旨や、法4条1項の文言に照らすと、開示請求の対象は、開示請求者の権利を侵害したとする情報の発信者についての情報に限られると解すべきであり、権利侵害情報でない情報の発信(以下「非侵害発信」という。)に係る者の情報は、これが開示されることにより、侵害情報の発信者が特定される可能性があるとしても、発信者情報開示請求の対象にならないと解すべきである。
   そして、本件アカウントへのログインの際の情報の発信は非侵害発信であり、この発信に係る者の情報は、発信者情報開示請求の対象にならないと解すべきである。


【裁判所の判断】

(1)争点1(本件各発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」(法4条1項柱書)に当たるか否か)について
 ア 原告が開示を求める本件各発信者情報が本件アカウントへのログインの際のものであるとしても、当該ログインからログアウトまでの機会に当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われたことの証明がなされているといえる場合には、本件アカウントへのログインの際の情報は法4条1項柱書に規定する「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解するのが相当である。なぜなら、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われたことの証明があった場合には、当該ログインに係る情報を「当該権利の侵害に係る発信者情報」と解することに文理上の障害はなく、また、かかる解釈は、権利の侵害を受けた者の正当な権利の行使を可能にするという立法趣旨にも合致するからである。
 イ そこで、本件ログイン(1)ないし(13)につき、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われたことの証明がなされているか否かを以下検討する。
  a)本件ログイン(1)ないし(3)は、本件各投稿行為より時間的に後になされたものであり、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われるということはそもそも不可能である。
  b)本件ログイン(4)ないし(13)は、本件各投稿行為より時間的に先行してなされているから、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われた可能性は認められる。
   しかしながら、上記各ログインに関しても、本件サイトにおいては、同一のアカウントに対し、複数の端末からのログイン状態の併存が可能であることからすれば、いずれのログイン状態を利用して本件各投稿行為がなされたのか不明であり、ひいては、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われたと認めるには至らないといわざるを得ない。
   また、本件においては、本件各投稿行為がなされた日からさかのぼって36日間(本件投稿行為1の場合)ないし46日間(本件投稿行為2の場合)の期間内に、本件ログイン (4)ないし(13)のとおり、複数のIPアドレスによるログインがあるものであって、投稿行為に用いられたアカウントに、投稿日から過去にさかのぼる相応の期間、唯一特定のIPアドレスによるログインしかなかったというような場合に当たるものでもない。
   これらによれば、本件各ログインの発信元のIPアドレス(本件各IPアドレス)相互の関係が証拠上不明であることを考慮するまでもなく、本件は、上記アで説示した場合には当たらないというほかない。
  c)以上からすれば、本件ログイン(1)ないし(13)につき、当該ログイン状態を利用して本件各投稿行為が行われたことの証明がなされているとはいえない。
   したがって、本件各発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たるとは認められないというべきである。

(2)結論
   その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない(請求棄却)。


 

東京高裁平成31年1月23日判決(判例時報2423号29頁)

アカウントへログインしたユーザーがログアウトするまでの間に記事を投稿しものとまでは認められないとして、ログイン情報の開示を認めなかった事例(確定)


【事案の概要】

(1)控訴人(1審原告)は、現在、Aという芸名で芸能活動をしている女子高生である。
   被控訴人(1審被告)は、電気通信事業を営む株式会社であり、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)2条3項の特定電気通信役務提供者に当たる。

(2)平成29年8月20日午前1時12分、被告を経由プロバイダとしながら、ツイッター内の別紙アカウント目録(略)記載のアカウント(以下「本件アカウント」という。)へログイン(以下「本件ログイン」という。)をした者がいる。
   控訴人の端末に表示されていた平成29年8月20日頃(控訴人の所有する端末に表示された投稿日時は午後2時21分及び午後5時4分)、本件アカウントへ「整形」という記載等を含む別紙投稿記事目録(略)記載の各記事(以下「本件各記事」という。)を投稿した者がいる。

(3)本件アカウントには、平成29年8月17日以降、本件各記事が投稿される前までに11回のログインがされており、その経過は別紙「ログイン状況」(略)記載のとおりである。本件各記事が投稿される直近のログイン(⑪)が被控訴人を経由したログインである。
   上記11回のログインのうち、7回(④ないし⑩)は被控訴人以外のプロバイダ(NTTドコモ)を経由したログインであり、いずれも本件ログインの前24時間以内(グリニッジ標準時の平成29年8月19日)にされていた。なお、本件各記事の投稿は、控訴人の主張を前提とすると、本件ログインから約13時間ないし16時間が経過した後にされたことになる。
  他方、本件ログインを含むその他の4回(①ないし③、⑪)は、いずれも被控訴人を経由してログインがされていた。

(4)本件各記事が投稿された後、控訴人は、自己のツイッターのアカウントにおいて本件アカウントをブロックしたところ(ブロックしたアカウントからは控訴人をフォローできなくなる)、本件アカウントに「(略)」などとの記載がなされた。
   その後、本件カウントは閉鎖されているが、本件アカウントでは、平成29年10月頃までに、少なくとも196件のツイートがされており、同月頃にされたツイートの内容は、本件各記事との関連性は認められない(甲10。なお、被控訴人は、甲第10号証のアカウントと本件アカウントが別のアカウントである可能性を指摘したが、本件アカウントのユーザー名(ID)は複雑なものであり、別人が使用するとは考えにくいこと、共に2017年8月に登録とされているところ、同一名では別の者が同時に登録できないことなどから、採用されなかった。)。

(5)控訴人(1審原告)は、氏名不詳者によるツイッターへの投稿により、名誉が毀損され、プライバシーを侵害されたことが明らかであると主張し、被控訴人(1審被告)に対し、法4条1項に基づき、本件ログインをした者の氏名又は名称等、別紙発信者情報目録(略)記載の各情報(以下「本件ログイン情報」という。)の開示を求めた。
   原審は、本件ログイン情報は、法4条1項の発信者情報に当たらないと判断して、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。


 【争点】

(1)権利侵害の明白性の有無(争点①)
(2)開示の正当理由の有無(争点②)
(3)被控訴人(1審被告)の開示関係役務提供者性(争点③)
(4)控訴人が開示を求める情報(注:原審のいう「本件ログイン情報」)の発信者情報該当性(争点④)
   以下、裁判所の判断の概要を示す。


   なお、原審は、争点④に関し、以下のとおり判示した。
 ア 発信者情報の開示請求権について定めた法4条1項の趣旨は、特定電気通信による権利侵害情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者に、権利侵害情報を流通させた発信者に関する情報の開示請求権を、開示関係役務提供者に対するものとして認め、権利を侵害されたとする者の利益を保護する一方で、その権利行使に際しては、権利侵害の明白性等の厳格な要件の充足を求め、憲法上保障されている発信者の通信の秘密等の利益保護に十分な配慮をする点にあると解される。
   よって、同項に基づく開示請求の対象は、開示請求者の権利を侵害したとする情報の発信者の情報に限られると解するのが相当である。この解釈は、同項但書きの「当該権利の侵害に係る発信者情報」という文理にも合致する。
 イ 原告(注:控訴人。以下同じ。)は、ツイッターの場合、ログイン時のIPアドレスしか記録されないから、ログイン情報を発信者情報に含めないと、ツイッターへの投稿で権利を侵害されても、一切、発信者情報の開示を請求し得ないことになり、不当である旨主張する。
   しかし、ログイン情報を発信者情報と解し得る規定は、法4条や同条1項が委任する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条1項の発信者情報を定める省令の中に見いだせないのであって、原告が法令に定めのない発信者情報の開示請求権を有すると解することもできない以上、立法による解決を待つしかないというべきである。
   原告の前記主張は、採用することができない。


【裁判所の判断】

(1)争点④(控訴人が開示を求める情報の発信者情報該当性)について
 ア 控訴人は、法が権利を侵害された被害者の救済の目的で制定された経緯、法4条やその委任する省令において発信者情報としてログイン情報を除くという規定がないことに照らせば、発信者情報にはログイン情報も含まれると解すべきである旨主張する。
   これに対し、被控訴人は、4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」は、開示請求権者の権利を侵害したとする通信の過程において把握される発信者情報に限定されるべきであり、控訴人が開示を求める情報は、これと異なり本件ログインの際のものであるから、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たらないと主張する。
   この点、法4条1項の文言上、開示の対象となるのは、「権利の侵害に係る発信者情報」である。
   しかし、例えば、権利の侵害に係る投稿の前に、ログインが一つしかないなど、当該ログインを行ったユーザーがログアウトするまでの間に当該投稿をしたと認定できるような場合には、当該ログインに係る情報を発信者情報と解することは妨げられるものではなく、発信者のプライバシー等の利益を考慮し、一定の厳格な要件のもと、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者の救済を図る法の趣旨に照らせば、そのようなログインに係る情報も、法4条1項に規定する「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり得ると解される。
 イ そこで、本件各記事の投稿について、本件ログインを行ったユーザーが、本件アカウントからログアウトするまでの間に行ったものであると認められるか否かについて検討する。
  a)控訴人は、本件アカウントの投稿は、一貫して控訴人が整形していることについて言及していることや、まとまった時間に投稿されていることに照らせば、複数人がアカウントを共有して投稿しているというというよりも、個人が投稿していると言える旨主張する。しかし、
  ・本件アカウントの名称は、「〇〇応援隊」という、複数のユーザーにより共有されていることと矛盾しないものであること
  ・本件アカウントには、少なくとも7件の投稿(ツイート)が行われているが、本件各記事が投稿された前後にどのような投稿がされていたかは証拠上明らかでないこと
  ・平成29年8月17日以降、本件アカウントには、本件各記事の投稿がされるまでに11回のログインがあり、そのうち4回は被控訴人を経由するものであるが、7回は被控訴人以外のプロバイダを経由してされていること
に照らせば、本件アカウントが複数のユーザーの共有である可能性もあるところである。
   また、上記いずれのログインについても、対応するログアウトの日時は明らかではなく、ツイッターでは、フォローしているアカウントのツイートを閲覧するなどのため長時間投稿をせずにログイン状態が継続していることも想定されることからすれば、本件ログインより以前になされたログインによって、本件各記事の投稿が行われた可能性も十分にあるということができる。
  b)また、控訴人は、直近にログインした端末から投稿するのが自然である旨主張する。
   しかし、本件ログインが行われたのは、平成29年8月20日午前1時12分であるところ、本件各記事が投稿されたのは、同日午後2時21分、午後5時4分であって、本件ログインの13時間ないし16時間も後にされたものであり、ログインと投稿の連続性を認められるほど時間的な近接性がなく、そもそも上記のとおり長時間ログイン状態を継続していることも想定されるのであるから、必ずしも本件各記事の投稿が本件ログインによりされたことを裏付ける事情になるものではない。
  c)更に、本件各記事の投稿後も、平成29年10月頃までに、本件アカウントには合わせて196件のツイートがされ、投稿には控訴人の容姿の変化に関するものとは無関係なものも含まれていることに照らせば、本件各記事の投稿時点でも、本件アカウントに本件各記事を投稿したユーザーとは別のユーザーが存在した可能性を排斥することはできない。
  d)よって、本件各記事の投稿は、本件ログインを行ったユーザーが、本件アカウントからログアウトするまでの間に行ったものであるとまで認めることはできない。
  e)なお、本件各記事の投稿をした者以外の者のIPアドレスに係る住所、氏名等の個人情報を開示した場合には、その者の通信の秘密を侵害する結果を招くことに鑑みれば、開示を求める情報が法4条1項に規定する権利の侵害に係る情報に該当するか否かは、慎重な検討が求められると解され、別のユーザーにより投稿された可能性が一定程度存する以上、開示が認められない場合があっても、やむを得ないというべきである。
 ウ 以上によれば、控訴人が開示を求める本件ログインに係る情報が、法4条1項に規定する「権利の侵害に係る発信者情報」ということはできない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求には理由がない。

(2)結論
   控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない(控訴棄却)。