横浜地裁平成30年9月13日判決(自保ジャーナル2035号103頁)

被告Bと被告Cとの間に客観的関連共同性が認められ、民法719条前段の共同不法行為が成立する場合、亡A、被告B及び被告Cの過失割合を検討するにあたっては、まず亡Aの死亡の直接の原因となった第2事故における亡Aの過失割合を検討し、その後、亡Aが横臥した経緯における亡Aの過失割合を検討する旨判示した事例(第1事件確定)


【事案の概要】

(1)次の交通事故が発生した。
 ア 第1事故
  ①発生日時 平成27年1月23日午前2時16分頃
  ②発生場所 横浜市内の信号機により交通整理の行われてる、東西に通ずる片側2車線(交差点手前では右折専用車線が設けられるため片側3車線となる)県道a号(指定制限速度50㎞)と南北に通ずる片側1車線の市道とが交わるb交差点(以下「本件交差点」という。)
  ③原告車  亡A(昭和63年4月生)運転の自家用普通自動二輪車(以下「Aバイク」という。)
  ④被告車  被告B運転の事業用大型貨物自動車(以下「Bトラック」という。)
  ⑤事故態様 亡Aが、Aバイクを運転して、本件交差点に向かって県道を東から西に走行し、被告Bが、Bトラックを運転して、本件交差点に向かって県道を西から東に走行していたところ、本件交差点内において、右折中のBトラックの左側面に、亡AとAバイクが衝突した。上記の第1事故発生後、被告Bは、Bトラックを移動させる際、亡Aの右大腿部をBトラックの走行するタイヤで圧迫した。
 イ 第2事故
  ①発生日時 平成27年1月23日午前2時17分頃
  ②発生場所 本件交差点
  ③原告車  Aバイク
  ④被告車  被告C運転の自家用普通乗用自動車(以下「C車両」という。)
  ⑤事故態様 Cは、C車両を運転して、本件交差点に向かって県道の第2車線を東から西に走行していたところ、先行車両が、第1事故の発生に気付いて極端に低速で走行していたことを認識した。しかし、Cは、本件交差点の対面信号が青信号であったことから、先行車両を追い抜くために、第1車線へと進路変更して、時速約50㎞で本件交差点に向かって走行したところ、本件交差点手前で本件交差点内に横臥する亡Aを認識し、急制動の措置を応じるととともにハンドルを右に転把したが、間に合わず、亡Aの胸部付近を輪禍し、亡Aに胸部大動脈破裂等の傷害を負わせた。

(2)第2事故発生後、亡Aは、D病院に救急搬送されたが、平成27年1月23日午前4時1分、D病院において死亡した。

(3)第1事件は、亡Aの母で相続人である原告E及び妹のF(以下「原告ら」という。)が、被告B、Bトラックの保有者で被告Bの使用者である被告Y会社及び被告C(以下「被告ら」という。)に対し、損害及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。
   第2事件は、被告Y会社との間で、Bトラックについて、自動車保険契約を締結していた第2事件原告が、保険法25条の規定に基づく保険代位により、被告Y会社の原告Eに対する損害賠償請求権を、支払った保険金(車両修理費)の合計金額の範囲内で取得したとして、車両修理費相当額及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

(4)共同不法行為の成立
   第1事故と第2事故は、時間的場所的に近接し、第1事故が第2事故の原因となっており、第1事故及び第2事故と亡Aの死亡との間に因果関係が存在するということができる。したがって、被告Bと被告Cとの間に客観的関連共同性が認められ、民法719条前段の共同不法行為が成立する(争いなし)。


 【争点】

(1)事故態様及び過失割合
(2)亡Aの損害及び原告らの固有の損害
(3)第2事件原告の取得した損害賠償請求権
   以下、上記(ただし、(2)については、人身損害に対する各自賠責保険からの支払の充当についてのみ)についての、裁判所の判断の概要を示す。


   なお、(1)に関し、原告らは、以下のとおり主張した。
 ア 本件における亡A、被告B及び被告Cの過失割合を検討するにあたっては、まず亡Aの死亡の直接の原因となった第2事故における亡Aの過失割合を検討し、その後、亡Aが横臥した経緯における亡Aの過失割合を検討することが相当である。
 イ 第2事故における亡Aの過失割合
   第2事故は、路上横臥者等の事故といえる(なお、同類事故の過失割合は、別冊判例タイムズ38号【48図】によれば、基本過失割合は亡A50%、被告C50%とされている。)。そして、亡Aの過失割合は30%を超えることはない。
 ウ 亡Aが横臥した経緯における亡Aの過失割合
   亡Aが横臥する原因となった第1事故は、交差点に青信号で進入して右折を開始したBトラックと交差点に黄色信号で進入したAバイクが衝突したという事故である。(なお、同類事故の過失割合は、別冊判例タイムズ38号【177図】によれば、基本過失割合は亡A60%、被告C40%とされている。)。そして、亡Aの過失割合は40%を超えることはない。
 エ 本件における亡Aの過失割合は、第2事故の責任の30%のうち、40%に相当する12%を超えることはない。したがって、被告らは、連帯して本件事故による亡Aの損害のうち88%相当を賠償する責任を負うべきである。


【裁判所の判断】

(1)事故態様及び過失割合
 ア 亡Aは,本件交差点を時速約89㎞の速度で、対面信号が黄色表示の時に進入したこと、被告Bが、対面信号が青色表示の時に右折を開始したことが認められ、亡Aには黄色信号で交差点に進入したこと、30㎞以上の制限速度違反があったことの過失がある。
   一方、被告Bには、対向車両の確認義務違反、また、Aバイク及び亡AとBトラックが衝突後に、路上に横臥する亡Aをヘルメットだと思い込み、Bトラックを移動させ、亡Aの右大腿部をタイヤで圧迫したという過失がある。
   以上から、第1事故の過失割合は、亡A70%、被告B30%となる。
 イ C車両が亡Aを輪禍した事故(第2事故)については、夜間に発生した路上横臥者等の事故であり、基本的には、車両と路上横臥者は同等の過失であると考えられる。そして、県道a号が幹線道路と認められることは、被告Cに有利に考慮すべき事情であるといえる。しかし、被告Cは、先行車両が事故に気付いて極度に減速していたにもかかわらず、先行車両を追い抜くために進路変更し、時速約50㎞で本件交差点に進入して亡Aを輪禍するに至っていることから、著しい過失がある。よって、第2事故の過失割合は、亡A50%、被告C50%となる。
 ウ そうすると、原告らの主張のとおり、亡Aが死亡するに至った直接の原因となったのは第2事故であると認められるところ、第2事故における亡Aの過失割合は50%であり、亡Aが路上に横臥する原因となった第1事故の亡Aの過失割合は70%であるから、本件の絶対的過失割合は、亡A35%、被告B15%、被告C50%となる。

(2)亡Aの損害及び原告らの固有の損害
 ア 前提
  ①亡Aの人的損害(ただし、過失相殺後。以下、同じ) 47,287,912円
  ②原告Eの人的損害 2,275,842円
  ③原告Fの人的損害 650,842円
  ④合計 50,214,596円
 イ C車両加入の自賠責保険からの支払 26,751,055円
   平成28年10月26日に支払われた。
   事故日から同日までの遅延損害金は4,417,373円となるので、まずこれに充当する。
   残額の22,333,682円を亡Aの人的損害元本に充当すると、残損害額合計は27,880,914円(亡Aの人的損害24,954,230円、原告Eの損害2,275,842円、原告Fの損害650,842円)となる。
 ウ Bトラック加入の自賠責保険からの支払 26,751,055円
   平成28年10月28日に支払われた。
   上記イの残損害額合計27,880,914円に対する、C車両加入の自賠責保険からの支払日の翌日である平成28年10月27日から同月28日までの遅延損害金は7,618円となるので、まずこれに充当する。
   残額の26,743,437円を亡Aの残損害額、亡Aの相続人である原告Eの損害に順次充当すると、残損害額合計は1,137,477円(原告Eの損害486,635円、原告Fの損害650,842円)となる。
 エ 損害及び弁護士費用合計
  ①原告E
  a)相続により取得した亡Aの物的損害 198,900円
  b)原告Eの残損害          486,635円
  c)弁護士費用             68,553円 
  d)合計               754,088円(認容額)
  ②原告F
  a)原告Fの残損害          650,842円
  b)弁護士費用             65,084円 
  c)合計               715,926円(認容額)

(3)第2事件原告の取得した損害賠償請求権
   第2事件原告は、平成27年6月1日、被告Y会社との間で締結していた、Bトラックについてその車両損害を補填する旨約定された自動車保険契約に基づいて、被告Y会社に対し、Bトラックの修理費用266,803円(内消費税19,763円)を支払った。
   第1事故の過失割合は、亡A70%、被告B30%と認められるから、過失相殺後の損害額は186,762円(円未満四捨五入)となる。よって、第2事件原告が保険法25条に基づく保険代位により取得する損害賠償請求権の額は186,762円となる。そして、亡Aの損害賠償債務を原告Eが相続することについては争いがない。
   以上によれば、第2事件原告の原告Eに対する請求は、186,762円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(一部認容)。