大阪地裁令和元年9月12日判決(判例秘書登載)

何らのコメントも付加せず元ツイートをそのまま引用するツイートは、特段の事情の認められない限り、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解されると判示した事例(控訴審係属中)


【事案の概要】

(1)本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。なお、反訴請求については省略する。)は、平成20年2月6日に大阪府知事に就任し、その後、大阪市長に就任していたが、本件投稿がなされた平成29年10月29日以前に、知事、市長を退任し、弁護士、テレビのコメンテーターなどとして活動している者である。
   本訴被告・反訴原告(以下「被告」という。)は、平成29年10月29日以前から、デジタルコンテンツの企画等を目的とし、インターネットを利用して報道等を行う株式会社Aの代表取締役であり、また、ジャーナリストとして活動する者である。

(2)被告は、平成2019年10月29日、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)において、以下の内容の投稿(以下「本件投稿」という。)をした。なお、本件投稿当時,被告のアカウントのフォロワー数は18万人を超えていた。
   「Retweeted △△大阪市解体の住民投票は中止な(@△△):
    X1氏、B議員の党代表「茶化し」2度目...C代表「20歳も年下に我慢している」
    http://(以下略)
    X1氏が30代で大阪府知事になったとき、20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき、自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」
   被告は、遅くとも本件提訴時(平成29年12月15日)までに、本件投稿を削除した。

(3)本件投稿は、ツイッターにおいて他人がした投稿を引用する形式で自己のアカウントから投稿する方法(リツイート)によりなされた投稿であり、本件投稿の引用元となった投稿は,平成29年10月28日になされた以下の内容の投稿(以下「本件元ツイート」という。)である。なお、本件元ツイートは、デイリースポーツに掲載された「X1氏、B議員の党代表「茶化し」2度目...C代表「20歳も年下に我慢している」」との記事を引用したものである。
   「X1氏、B議員の党代表「茶化し」2度目...C代表「20歳も年下に我慢している」
    headlines.yahoo.co.jp/(以下略)
    X1氏が30代で大阪府知事になったとき、20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき、自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」


【争点】

(1)本件投稿による名誉毀損の有無(争点1)
(2)本件投稿による違法性阻却事由の有無(争点2)
(3)原告の損害の有無・内容(争点3)
(4)本件提訴が訴権の濫用に当たり、被告に対する不法行為を構成するか(争点4)
(5)被告の損害の有無・内容(争点5)
   以下、本訴請求に関する上記(1)から(3)までについての裁判所の判断の概要を示す。


   なお、被告は、争点1に関する本件投稿の行為主体について以下のとおり主張した。
   リツイートの機能には、自らの意見を発信する以外に、リツイートをした者が第三者の投稿内容(元ツイート内容)を紹介して拡散することも含まれる。その拡散の目的には、元ツイートの内容に賛同する意思表示の場合もあれば、内容に批判的であるからこそ紹介する場合、リツイートをした者の単なる備忘録的な目的の場合など、様々な場合がある。被告は、本件元ツイートを情報提供の趣旨でリツイートしたに過ぎないから、本件投稿は本件元ツイートの投稿者の発言とみるべきであって、当然に被告の投稿(発言)と同視して評価して、被告を本件投稿の行為主体とみることはできない。


【裁判所の判断】

(1)本件投稿による名誉毀損の有無(争点1)
 ア 本件投稿の行為主体(責任の帰属主体)について
   本件投稿は、リツイートの形式で、何ら被告によるコメントを付すことなく投稿されたツイートであるところ、被告は、この点を指摘して、本件投稿は本件元ツイートの投稿者の発言とみるべきであると主張する。
   そこで検討するに、ツイッターにおいては、投稿者は、自己の発言を投稿するのみならず、他者の投稿(元ツイート)を引用する形式で投稿(リツイート)することができるところ、リツイートの際には、自己のコメントを付して引用することや、自己のコメントを何も付さずに単に元ツイートをそのまま引用することもできる。そして、投稿者がリツイートの形式で投稿する場合、被告が主張するように、元ツイートに賛同する目的でこれを引用する場合や、元ツイートの内容を批判する目的で引用する場合など、様々な目的でこれを行うことが考えられる。
   しかし、他者の元ツイートの内容を批判する目的や元ツイートを他に紹介(拡散)して議論を喚起する目的で当該元ツイートを引用する場合、何らのコメントも付加しないで元ツイートを引用することは考えがたく、投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは異なることを明らかにするべく、当該元ツイートに対する批判的ないし中立的なコメントを付すことが通常であると考えられる。したがって、何らのコメントも付加せず元ツイートをそのまま引用するリツイートは、ツイッターを利用する一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、例えば、前後のツイートの内容から投稿者が当該リツイートをした意図が読み取れる場合など、一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が理解できるような特段の事情の認められない限り、リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当である。
   そうすると、本件投稿においては、上記特段の事情は認められないから、本件投稿で引用された本件元ツイートの内容は、本件投稿の投稿者である被告による、本件元ツイートの内容に賛同する旨の意思を示す表現行為としての被告自身の発言ないし意見でもあると解するのが相当であり、被告は、本件投稿の行為主体として、その内容について責任を負うというべきである。
   仮に、被告が本件投稿を行った主観的意図がフォロワーに対する情報提供という点にあったとしても、前記のとおり、一般の閲読者と閲読者の普通の注意と読み方を基準とすると、何のコメントも付さないままリツイートするという本件投稿の態様からすれば、その情報提供には本件元ツイートの内容に賛同する被告の意思も併せて示されていると理解されるべきである。
 イ 本件投稿の名誉毀損行為該当性について
  (ア)一般に、名誉毀損の成否が問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評の表明であるかについては、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものであり、そのような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するものというべきである。
   また、人の社会的評価を低下させる表現は、事実の摘示であるか、意見ないし論評の表明であるかを問わず、人の名誉を毀損するというべきであるところ、ある表現における事実の摘示又は意見ないし論評の表明が人の社会的評価を低下させるかどうかは、当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準としてその意味内容を解釈して判断すべきものと解される(以上につき、最高裁平成16年7月15日判決等参照)。
   そこで、これらを前提に、以下、本件投稿が原告に対する名誉毀損行為に該当するかについて検討する。
  (イ)本件投稿の性質について
  (a)本件投稿は、「大阪府知事であった原告が、大阪府の幹部職員に対して生意気な口をきき、当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ」事実を摘示する表現と認めるのが相当である。
  (b)これに対し、被告は、仮に、本件投稿が被告の表現と理解されるべきとしても、本文末尾の「忘れたのか!恥を知れ!」との部分を表現の核心部分とする原告の言動に対する被告の意見論評であるなどと主張する。
   しかし、「忘れたのか!恥を知れ!」との表現部分は、原告の言動を非難する表現ではあるものの、自己の見解を具体的に述べるものではなく、抽象的に非難する言葉を記載しただけのものであり、それが、「X1氏が30代で大阪府知事になったとき,20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだこと」という、それ自体原告の社会的評価を低下させる事実を記載した文言に続くものであることからすると、本件投稿を全体としてみた場合、上記(a)に説示したとおり、表現の中心的部分は「大阪府知事であった原告が、大阪府の幹部職員に対して生意気な口をきき、当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ」との事実を摘示する部分というべきであるから、上記被告の主張は採用できない。
 ウ 本件投稿による原告の社会的評価の低下の有無について
   上記イのとおり、本件投稿は、被告が「大阪府知事であった原告が、大阪府の幹部職員に対して生意気な口をきき、当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ」との事実を摘示するものであるところ、本件投稿の一般の閲読者の注意と読み方を基準とすれば、同事実は、原告について、部下職員を自殺に追い込むようなパワーハラスメントを行った人物であるとの印象を与えるものであるから、本件投稿は原告の社会的評価を低下させる表現であると認められる。
 エ 以上に検討したところによれば、本件投稿は、被告の原告に対する名誉毀損行為に該当する。

(2)本件投稿による違法性阻却事由の有無(争点2)
   事実を摘示してする名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分において真実であるとの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、その行為者において上記事実の重要な部分を真実と信じるについての相当の理由があれば、その故意または過失は否定されるものというべきである(最高裁昭和58年10月20日判決等参照)。
   この点、被告は、原告の主張に対応する真実性の抗弁(原告の主張する摘示事実を前提とし、それが真実である旨の主張)の主張をしていない。しかし、当事者の主張内容に鑑み、念のため、これを本件投稿についてみても、本件投稿による被告の名誉毀損行為について、真実性の証明による違法性阻却は認められず、被告の故意、過失も否定されない(なお、仮に、本件投稿を被告の意見論評を表現するものと解する余地があったとしても、その前提となる重要な事実は、前記(1)イ(イ)(a)に説示したとおりであり、それが真実であるとか、被告がそれを真実と信じていたとは認められないから、やはり違法性は阻却されず、被告の故意、過失も否定されない。)。

(3)原告の損害の有無・内容(争点3)
 ア 慰謝料 30万円
   被告は、テレビや雑誌で活動する著明なジャーナリストで、本件投稿がなされた被告のツイッターのフォロワー数は18万人を超えており、このように社会的影響力のある被告による本件投稿は、一般人のツイートとは異なり、拡散力、信用力が大きいものと考えられること、本件投稿のその後の拡散(本件投稿に対するリツイート)状況は不明であるものの、インターネット上の表現の特質として、インターネット上から完全に削除することは事実上不可能であること、被告は、遅くとも本件投稿の約1か月半後の本訴提起時(平成29年12月15日)までには本件投稿を削除していることのほか、原告及び被告の社会的地位ないし活動状況等、本件に現れた本件投稿に関する一切の事情を総合考慮すれば、被告の本件投稿による名誉毀損行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金額は、30万円と認めるのが相当である。
 イ 弁護士費用 3万円

(4)結論
   以上によれば、原告の本訴請求は、33万円およびこれに対する遅延損害金を求める限度で理由がある(一部認容)。


 

知財高裁平成30年4月25日判決(判例時報2382号24頁)

リツイート行為が、控訴人の著作者人格権を侵害する行為であると認めたものの、最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性を否定した事例(上告受理申立中)


【事案の概要】

(1)本件は、控訴人が、インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」(以下「ツイッター」という。)において、被控訴人の著作物である原判決別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)が、
  ①氏名不詳者により無断でアカウントのプロフィール画像として用いられ、その後当該アカウントのタイムライン及びリツイート(投稿)にも表示されたこと、
  ②氏名不詳者により無断で画像付きツイート(ツイッターにおける短文投稿のこと)の一部として用いられ、当該氏名不詳者のアカウントのタイムラインにも表示されたこと、
  ③氏名不詳者らにより無断で上記②のツイートのリツイートがされ、当該氏名不詳者らのアカウントのタイムラインに表示されたこと
により、控訴人の本件写真についての著作権(複製権、公衆送信権(送信可能化権を含む。)、公衆伝達権。以下、これらを総称して「本件著作権」という。)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権。以下、これらを総称して、「本件著作者人格権」とう。)が侵害されたと主張して、
   「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、上記①~③のそれぞれについて、別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求めるものである。
   なお、別紙発信者情報目録の内容は、以下のとおりである。
 1 別紙流通情報目録(注:下記PDFファイル参照)記載に係る各流通情報を発信した者(別紙アカウント目録(略)記載の各アカウント保有者)の電子メールアドレス
 2 別紙流通情報目録記載に係る別紙アカウント目録記載の各ツイッターアカウントにログインした際のアイ・ピー・アドレスのうち、本判決確定の日の正午時点(日本標準時)で最も新しいもの
 3 上記第2項のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた電気通信設備から、被控訴人らの用いる特定電気通信設備に上記第2項のログイン情報が送信された年月日及び時刻
【改訂版】知財高裁H30.4.25判決

(2)原判決(東京地裁平成28年9月15日判決・判例時報2382号41頁)は、被控訴人米国ツイッター社に対する請求を、原判決別紙流通情報目録(略)記載1及び2の各アカウントの別紙原判決別紙発信者情報目録(第1)(略)記載の3の各発信者情報(注:電子メールアドレス)の開示を求める限度で認容し、被控訴人米国ツイッター社に対するその余の請求及び被控訴人ツイッタージャパンに対する請求をいずれも棄却したので、これを不服とする被控訴人が本件控訴を提起した。


 【争点】

(1)被控訴人ツイッタージャパンが別紙発信者情報目録の情報を保有しているか
(2)別紙アカウント目録(略)記載のアカウント1(以下「本件アカウント1」という。その他のアカウントについても、同じ。)及び本件アカウント2につき、ツイート及びタイムラインへの本件写真の表示(流通情報1(6)及び(7)、2(3)及び(4)により控訴人の本件著作権及び本件著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか(プロバイダ責任制限法4条1項1号)
   なお、本件プロフィール画像設定行為及びタイムラインへの本件写真の表示(流通情報1(1)~(5)並びに本件ツイート行為2及び本件ツイート2(注:原判決のいうもの)への表示(流通情報2(1)及び(2)が控訴人の公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害することは当事者間に争いがない。
(3)本件アカウント3~5につき、本件リツイート行為(流通情報3~5)により控訴人の本件著作権及び本件著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか(プロバイダ責任制限法4条1項1号)等
(4)判決確定日時点における最新のログイン時IPアドレス及びこれに対応するタイムスタンプが、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定める省令」(以下「省令」という。)4号の「侵害情報に係るIPアドレス」及び7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に該当するものとして、プロバイダ責任制限法4条1項により開示されるべき「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
(5)控訴人が発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)を有するか
   以下、本判決の主文を示したのちに、上記争点に関する裁判所の判断の概要を示す。


【主文】

1  原判決を次のとおり変更する。
(1)被控訴人米国ツイッター社は、控訴人に対し、
  ①被控訴人米国ツイッター社が運営するツイッターにおいて、別紙流通情報目録1(1)~(4記載のURLにアクセスしたクラインアントコンピュータ・モニター画面に、同目録(1)~(4「表示される画像」記載の各画像が表示されるように設定した本件アカウント1のアカウントの保有者
  ②ツイッターにおいて、クライアントコンピュータが、別紙流通情報目録1(5記載のURLのウェブページにアクセスした際に、タイムラインに表示される自ら投稿したツイート毎に表示される自らのプロフィール画像として、同目録1(5「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した本件アカウント1のアカウントの保有者
  ③ツイッターにおいて、クライアントコンピュータが別紙流通情報目録2(1記載のURLにアクセスした際に表示される、本件ツイート1に表示される画像として、別紙流通情報目録2(1「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した本件アカウント2のアカウントの保有者
  ④ツイッターにおいて、別紙流通情報目録2(2記載のURLにアクセスしたクライアントコンピュータ・モニタ画面に、同目録2(2「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した本件アカウント2のアカウントの保有者
  ⑤ツイッターにおいて、クライアントコンピュータが別紙流通情報目録2(3)及び(4記載のURLのウェブページにアクセスした際に、タイムラインに表示される本件ツイート1に表示される画像として、別紙流通情報目録2(3)及び(4「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した本件アカウント2のアカウントの保有者
  ⑥ツイッターにおいて、クライアントコンピュータが別紙流通情報目録3~5記載の各URLのウェブページにアクセスした際に、タイムラインに、別紙流通情報目録3~5「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した本件アカウント3~5のアカウントの保有者
   の電子メールアドレスを開示せよ。
(2)控訴人の被控訴人米国ツイッター社に対するその余の請求及び被控訴人ツイッタージャパンに対する請求をいずれも棄却する。

2以下 略


【裁判所の判断】

(1)被控訴人ツイッタージャパンが別紙発信者情報目録の情報を保有しているか
   被控訴人ツイッタージャパンが発信者情報を保有しているとは認められないから、控訴人の被控訴人ツイッタージャパンに対する請求はいずれも理由がない。

(2)争点(2)(本件アカウント1及び2における本件写真の表示(流通情報1(6)及び(7)、2(3)及び(4)による控訴人の著作権等侵害の明白性)及び争点(3)(本件リツイート行為(流通情報3~5)による著作権等の侵害の明白性)について
   事案に鑑み、争点(3)について判断し、その後に争点(2)について判断する。
 ア 事実関係等
   本件リツイート行為により本件アカウント3~5のタイムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLのインラインリンクが設定されて、同URLに係るサーバーから直接ユーザーのパソコン等の端末に画像ファイルのデータが送信され、ユーザーのパソコン等に本件写真の画像が表示されるものである。
   もっとも、ユーザーのパソコン等の端末に、本件写真の画像が表示させるためには、どのような大きさや配置で、いかなるリンク先からの写真を表示させるか等を指定するためのプログラム(HTMLプログラム、CSSプログラム、JavaScriptプログラム)が送信される必要があること、本件リツイート行為の結果として、そのようなプログラムが、リンク元のウェブページに対応するサーバーからユーザーのパソコン等に送信されること、そのことにより、リンク先の画像とは縦横の大きさが異なった画像や一部がトリミングされた画像が表示されることがあること、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通情報2(2)の画像とは異なるものであること(縦横の大きさが異なるし、トリミングされており、控訴人の氏名も表示されていない)が認められる。
 イ 公衆送信権侵害(著作権法23条1項)について
   控訴人が著作権を保有しているのは、本件写真であるところ、本件写真のデータは、リンク先である流通情報2(2)に係るサーバーにしかないから、送信されている著作物のデータは、流通情報2(2)のデータのみである。そして、公衆送信は、「公衆によって直接受信されることを目的として送信を行うこと」であるから、公衆送信権侵害との関係では、流通情報2(2)のデータのみが「侵害情報」というべきである。
   本件リツイート行為によってユーザーのパソコン等に表示される本件写真の画像は、それらのユーザーの求めに応じて、流通情報2(2)のデータが送信されて表示されているといえるから、自動公衆送信(公衆送信のうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。))に当たる。
   自動公衆送信の主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ、情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成23年1月18日判決参照)、本件写真のデータは、流通情報2(2)のデータのみが送信されていることからすると、その自動公衆送信の主体は、流通情報2(2)のURLの開設者であって、本件リツイート者らではないというべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは、行為の対象、方法、行為への関与の内容、程度等の諸般の事情を総合的に考慮して、規範的に解釈すべきであり、カラオケ法理と呼ばれるものも、その適用の一場面であると解される(最高裁平成23年1月20日参照)が、本件において、本件リツイート者を自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。
 ウ 複製権侵害(著作権法21条)について
   前記イのとおり、著作物である本件写真は、流通情報2(2)のデータのみが送信されているから、本件リツイート行為により著作物のデータが複製されているということはできない。
 エ 公衆伝達権侵害(著作権法23条2項)について
   著作権法23条2項は、公衆送信された後に公衆送信された著作物を、受信装置を用いて公に伝達する権利を規定しているものである。ここでいう受信装置がクライアントコンピュータであるとすると、その装置を用いて伝達している主体は、そのコンピューターのユーザーであると解される。よって、本件リツイート者らを伝達主体と評価することはできない。
 オ 著作者人格権侵害について
  a)同一性保持権(著作権法20条1項)侵害
   前記アのとおり、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は、表示するに際して、本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどが指定されたために、上記のとおり画像が異なっているものであり、流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えられているものではない。
   しかし、表示される画像は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものとして、著作権法2条1項1号にいう著作物ということができる。そして、上記のとおり、表示するに際して、HTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために、本件アカウントの3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められる。よって、本件リツイート者らによって改変されたもので、同一性保持権が侵害されている。
  b)氏名表示権侵害(著作権法19条1項)について
   本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像には、控訴人の氏名は表示されていない。そして、前記アのとおり、表示するに際して、本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどが指定されたために、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像と異なり、控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められる。よって、控訴人は、本件リツイート者らによって、本件リツイート行為により、著作物の公衆への提供又は提示に際し、著作者名を表示する権利を侵害された。
  c)名誉声望保持権(著作権法113条6号)について
   本件リツイート者らは、控訴人の名誉声望保持権(著作権法113条6号)を侵害したとは認められない(詳細略)。
 カ 「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び「発信者」(同法2条4号)について
   前記オa)b)のとおり、本件リツイート行為は、控訴人の著作者人格権を侵害する行為であるところ、前記オa)b)認定の侵害態様に照らすと、この場合には、本件写真の画像データのみならず、HTMLプログラムやCSSプログラム等のデータ等のデータを含めて、プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ、本件リツイート行為は、その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかである。そして、この場合の「発信者」は、本件リツイート者らである
 キ 争点(2)について
   本件アカウント2(3)(4)については、流通情報3~5と同様に、流通情報2(2)の画像が改変され、控訴人の氏名が表示されていないということができるから、著作者人格権の侵害がある。
   しかし、本件アカウント1の流通情報1(6)(7)については、流通情報1(3)の画像と同じものが表示されているから、著作者人格権の侵害があると認めることはできない。これらについて著作権の侵害を認めることができないことは、流通情報3~5と同様である。

(3)争点(4)(最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性)について
 ア 控訴人は、最新のログイン時IPアドレスが省令4号の「侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス」に、同タイムスタンプが同7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に該当し、プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たる旨主張する。
 イ この点、プロバイダ責任制限法4条1項は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、・・・当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。・・・)の開示を請求することができる。」と定めているところ、同項は、「当該権利の侵害に係る発信者情報」について開示を認めるとともに、具体的に開示の対象となる情報は総務省令で定めるとし、省令はこれを受けて、省令4号は「侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス・・・及び当該アイ・ピー・アドレスと組み合わされたポート番号」と、同7号は「侵害情報が送信された年月日及び時刻」とそれぞれ定められているのであるから、省令4号の「侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス」には当該侵害情報の発信に関係しないものは含まれず、また、当該侵害情報の発信と無関係なタイムスタンプは同7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に当たらないと解するのが相当である。
   これを本件についてみると、本件アカウント1が開設されたのは平成25年4月1日であり、本件プロフィール画像設定行為がされたのは遅くとも平成27年1月21日であることなどが認められる。なお、控訴人が札幌地方裁判所に本件訴えを提起したのは、平成27年3月25日である。
   そうすると、控訴人が開示を求める最新のログイン時IPアドレス及びタイムスタンプは、本件において侵害情報が発進された上記各行為と無関係であり、省令4号及び7号のいずれにも当たらない。したがって、別紙発信者情報目録記載2及び3(【事案の概要】(1)参照)についての控訴人の被控訴人米国ツイッター社に対する請求は理由がない。
 ウ これに対し、被控訴人は、ツイッターにおいては、被控訴人らが唯一保有している最新ログイン時IPアドレス及びこれに対するタイムスタンプが開示されなければ、控訴人の権利を侵害した侵害情報発信者を特定する途を絶たれることになる(注:控訴人は、被控訴人らが提供するツイッターサービスにおいては、記事の投稿に係るIPアドレス及びタイムスタンプは取得されず、記事投稿直前のログイン時のIPアドレス及びタイムスタンプの情報が取得される。逆に、記事投稿時のタイムスタンプは公開されているが、記事投稿時のIPアドレスが保有されていないため、IPアドレスが不明な投稿時のタイムスタンプは発信者特定において意味をなさないと主張している。)などと主張する。
   しかし、プロバイダ責任制限法4条及び同法の委任による省令は、発信者が有するプライバシーや表現の事由、通信の秘密等の権利・利益と権利を侵害された者の差止め、損害賠償等の被害回復の利益との調整を図るために設けられた規定であって、プロバイダ責任制限法は、その範囲で発信者情報の開示を求める権利を認めているものである。そして、前記イ判示のとおり、プロバイダ責任制限法4条及び省令において開示を求める権利が認められているものの中に、最新ログイン時IPアドレス及びこれに対するタイムスタンプは含まれていない。したがって、控訴人の主張は、立法論にとどまるものというほうかなく、失当である。
   なお、プロフィール写真として無断使用された場合、全ツイート記事へ画像表示されるとしても、侵害行為としては、プロフィール画像として写真の画像ファイルをアップロードしたことで完結しており、その後画像表示が継続されることが当然に侵害行為となるということはできない。

(4)争点(5)(発信者情報の開示を受ける正当な理由の有無)
   以上のとおり、控訴人は本件アカウント1~5に本件写真を表示させた者に対し著作権又は著作者人格権の侵害を理由として権利行使し得るところ、上記の者の特定に資する情報を知る手段が他にあるとは認められないから、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

(5)結論
   控訴人の請求は、被控訴人米国ツイッター社に対して、主文1(1)の電子メールの開示を求める限度で理由がある(原判決変更)。


【追記】

   令和元年10月3日、最高裁判所にて、本件の記録を閲覧し、別紙流通情報目録PDFファイル及び別紙ツイート目録(注:「ツイート1」として、本件アカウント2によるツイートのみが記載されているもの)に関する記載を改訂した。