クロード・モネー風景への問いかけ(会期:2026.2.7-5.24)
クロード・モネ(1840-1926)の没後100年に当たり、その始まりの地ル・アーブルから、エトルタ、トルーヴィル、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ルーアンなどを経て、その終焉の地ジヴェルニーに至るまでの画業を辿る展覧会です。

第1 概要
セクション1(モティーフに最も近い場所でーノルマンディーとフォンテーヌブローで制作した1860年代のモネ)からセクション11(池の中の世界ー睡蓮)まで、合計11のセクションで構成されています。ただし、セクション2、9及び10は写真の展示、セクション7は浮世絵の展示です。概ね年代順の展示となっており、旅と転居を重ねて、各地で戸外制作を行ったモネの画風の変遷を辿ることができます。以下、主な滞在先毎に印象に残った作品をご紹介します。
1 ル・アーブル(1845-58)
モネは、パリで生まれた後、少年時代の大半をル・アーブルで過ごし、1857年にウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)と知り合い、戸外での絵画制作を始めました。下記の作例は、モネがパリへ出立した後、ル・アーブル又はオンフルール近郊の風景を描いた、「ノルマンディーの農場」(1863年頃)です。

2 エトルタ(1868-69)
モネは、1868年ら翌年までの冬の時期、家族とともにエトルタに滞在し、積雪した土地に降り注ぐ陽光と建物や樹木が作り出す影をテーマとした作品の制作に励みました。下記の作例は、「かささぎ」(1868-69年)です。

3 トルーヴィル(1870)
モネは、1870夏、新婦カミーユと息子ジャンとともに、トルーヴィルに滞在しました。モネは、この日差し溢れる海岸で、ブーダンとともに、作品制作に当たりました。下記の作例は、「トルーヴィル、ロシェ・ノワールのホテル」(1870年頃)です。

4 アルジャントゥイユ(1871-78)
モネは、1871年12月から1878年までパリ近郊のアルジャントゥイユに住み、ヨットレースや川辺の散歩道などなど、様々なテーマの作品を制作しました。当時のアルジャントゥイユは、工場の集積地であると同時に、市民が余暇を楽しむ地でもあり、活気に溢れた場所でした。この時期のモネの作品からも、当地の明るい雰囲気が伝わってきます。下記の作例は、「アルジャントゥイユのレガッタ」(1872年頃)です。

下記の作例は、「パリ、モントルグイユ街、1878年6月30日の祝日」(1878年頃)です。

5 ヴェトゥイユ(1878-79)
モネは、1878年から1881年の間、パリから約60km北西にある小村のヴェトュイユ(Vetheuil)に居を構えました。この時代、モネは、病身の妻カミーユと2人の子供たちに加えて、破産したエルネスト・オシュデとその妻アリス、その夫婦の6人の子供たちと共同生活を送っていました。そのため、生活は苦しく、寒波の影響もあり、この時代の作品の暗い、思い色調の作品が多くなっています。下記の作例は、「死の床のカミーユ」(1879年)です。

6 ペリール(1886)
モネは、1886年秋、ブルターニュ地方のベリール(Belle-lie)に約2か月間滞在し、39点の作品を制作しました。モネは、明るい陽光の射すモチーフから離れて、疾風の吹きすさぶ荒々しい岩礁にイーゼルを立て、その瞬間の光と大気を表現しました。下記の作例は、「嵐、ペリールの海岸」(1886年)です。

7 ルーアン(1892-93)
モネは、1892年と1893年に、ルーアンに滞在し、当地のゴシック建築物であるルーアン大聖堂を描きました。モネは、「ポプラ並木」や「積みわら」と同様の連作の形式で、堅牢な建物をモチーフとしつつ、移ろいゆく光と大気を表現しました。下記の作例は、「ルーアン大聖堂 扉口とサン=ロマン塔 陽光」(1893年)です。

8 ヴィネツィア(1908)
モネは、1908年秋の約3か月館、妻アリスとともに、ヴェネツィアに逗留しました。空の消えゆく光とその海への反映に魅せられたモネは、当地で約30店の作品を制作しました。下記の作例は、「黄昏、ヴィネツィア」(1908年頃)です。

9 ジヴェルニー(1883-1926)
モネは、1883年4月に家族とともにジヴェルニーに移り住み、1890年に土地を買い取ってからは、庭の造作工事を続け、1892年には池に日本風の太鼓橋も設けられました。さらに、モネは、1893年に南側の隣接地を購入して、睡蓮の池を拡張しました。このモネの庭は、「失われた時を求めて」の作家であるマルセル・プルースト(Marcel Proust)により、「絵のモデルである以上に、まさしく芸術を置き換えたものであり、自然自体に描かれた作品である。」と評されています。下記の作例は、「ジヴェルニーのモネの庭」(1900年)です。

第2 雑感
生涯をかけて光と大気の揺らぎを追い求めた、モネの壮大な画業を点描することができました。どの作品も、案出された構成上の塗面に即して筆触が重ねられており、味わい深いものがありました。
